第57話 ストーカー?
「……」
「……」
「……なんでここにいるの? わたし、正也に家教えてないよね?」
「偶然だな」
「嘘でしょ!」
「いや、本当に偶然としか言えないんだけど……」
「もし仮に偶然だったとしても、そう思えるわけ無いでしょ!」
「いや、まあ。それはそうなんだが」
「ストーキング?」
「いや、違ぇよ。……いや、ほんとに偶然なんだよ……」
「ねえ、言い訳にしか聞こえてこないんだけど」
どうしてこうなった!?
いや、確かに、確かにこれが偶然なんて言われれば出来すぎていると思う。本当に。
そもそも、俺は沙奈の最寄り駅すら知らないし、住所なんて以ての外だ。
偶然と偶然が重なるとこうなるか。などと、若干他人事のように受け取ってしまうのも無理はないと思う。実際、まだ実感が湧いていない。
どういうことなのだろうか。
いや、言いたいことはわかるのだ。住所も、最寄り駅も教えていない相手が家の前にいたら、ストーカーだと思うだろう。
いや、違うんだ。とりあえず、本でも見に行くかとそう思いたち、大きめの書店を目指して電車に乗り込んだのだが、見事に乗り過ごした。
それで、来たことのない場所に行くのも一興かな。などと、最近読んだ旅系のライトの別の思考に完全に足を引っ張られ、気がつけば追加分の電車賃を支払い、改札口を出ていた。軽くホラーだ。
それでまあ、出てみたはいいものの、土地勘などまったくない場所なので、同仕様もなく迷うしか無い勝ったのだ。
いや、スマートフォンという文明の利器があるのだから、使えばよかったのだが、またもやライトノベルに足を引っ張られ、スマホを使ったら負けなどというルールを勝手に設けてしまったのだ。
まあ、それで住宅街に突入し、ここらにはなにもないだろうなー。などと考えな上がら歩いていると、荻原という表札が掛かっているのが見えて、沙奈と同じ苗字だな。なんて思っていたら、本当に沙奈がその家から出てきたというのが、事の顛末だ。
「……なるほど。即興で考えた作り話にしては、よく出来ているわね。いつも小説ばっかり読んでるだけはあるんじゃない?」
「いや、作り話じゃないんだけどな。まあ、そう思われても仕方ないというのは重々承知していますけども」
「わかっているだろうけど。本当に作り話にしか思えないわね。どうしても、これが事実だということを脳が理解するのを拒んでいるわ」
「そうだな。俺もびっくりだな。本当に」
「とりあえず、正也の家も教えて?」
「え? なぜ?」
「私の家を知ったんだから、私も正也の家を知る権利があるはずよ」
「なるほど……(わかってない)」
結局、俺は沙奈に自分の家を教えた。
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