雪嫌いな雪女がアイデンティティを喪失している

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 どうやら俺は、山奥で雪女に出会ってしまったらしい。


 猛吹雪が吹いている中、明かりのついた家を見つけて、ごめんくださいしたら。


 そこは、妖怪の住処だった。


 見た目は普通の人間でべっぴんさんだ。


 好きな人のタイプにストレイクしていて、長い黒髪に白い肌、それを引き立てるような淡い花の模様に清楚な薄青色の浴衣が、グッジョブしてる。


 こんなに俺の好みに合う人なんて、そうそういやしないから、結婚を申し出たいところであるが。


 だがしかし、雪女だ。


 どうして雪女と分かったかというと、その雪女周囲に雪が舞ってるのだ。


 外ならまだ、吹雪いているからごまかせただろう。


 なのに、家の中でも舞っているのだ。


 家の中でも。


 そりゃ、普通の人間じゃねぇよな。


 玄関口でさようならしようとして回れ右したのだが、その瞬間猛吹雪のレベルがあがって激吹雪を通り越して酷吹雪って感じになった。


 さすがに今外に出たら死ぬと思ったね。


 外に出るのと、家の中に入る。


 どっちが生存率高いかなと思ったら、僅差で家の中だった。


 というわけで、


 いま、雪女と同じ建物の中にいる。


 でも、この雪女。


 なんか普通の雪女って感じがしない。


 だって、雪女なのに雪が嫌いなんだぜ?


 窓の外を見るたびに、雪を見て忌々し気に舌打ちしてるんだもん。


 どうした?


 アイデンティティ否定してない?


 なんて思っていたら、


 買い出しができないとか、


 家の中だと気が滅入るとか言い出した。


 雪の重みで家がつぶれるかもとか。


 そういうの、不思議パワーで何とかならないんだな。


 妖怪はあれでも、日常生活送らなきゃ死んじゃうタイプなのかな?


 精神構造は人間と同じみたいだし、周囲のあれこれが都合よくなるほど万能ではないみたいだ。


 普通の人間もこんな雪だと困るもんね。


 特に俺はど田舎に住んでるし、交通の便は悪い。


 なのに、雪はどかどか降ってくる。


 そんな事を言ったら、俺達はなんとなく意気投合。


 雪アンチになって、雪アンチトークにのめりこんだ。


 そして、そのまま何事もなく一夜が経過。


 朝日を浴びながら、きらきら輝く美しい雪山を下山して家に無事帰ったよ。


 え?


 雪女に襲われたなかったのかって?


 俺も疑問に思ったさ。


 でも、能力を使う時に雪が舞うからできるだけ使いたくないみたいなんだよな。


 掃除が大変とか、家の中がしけるとか。


 人型の妖怪って、色々人間と似てると、大変なんだなって思ったよ。


 雪女が雪嫌いで男凍らせなかったら、もうこれただの人間じゃね?


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