第10話 NNN
「・・・ごめん」
と最初に謝られて、
それは、「私、大丈夫だから何でも言って」と言う意味。
「・・・あのね、もっと早く言わなきゃだったの。でも、言えなくて。・・・って言うか、言っちゃうと・・・皆に迷惑かけちゃうし・・・自分でも、こんな形で終わったと思いたくなくて・・・」
黒猫が
「・・・今日、この後、結婚のお祝いのプレゼント買ってくれるって言ってたでしょ。でもね、それ必要無くなっちゃったの。・・・結婚の話、無くなっちゃったから・・・」
このタイミングで切り出される告白なら、それだろうとは思ったけれど。
「・・・どうしようね。私、うちの両親にも、会社にも結婚するって話しちゃったから。バカだったなあ」
「・・・そんな。だって、来週に入籍って言ってたんだもの。きちんと先に報告するの当たり前じゃない」
そうなんだけど、と
「あっちは初婚じゃないからって、結納も披露宴も無しでいいって事にしたのは、私。・・・正解ね。やっぱり、どっかでうまくいかないかもって・・・自分でも私、思ってたのかなあ。・・・今住んでるマンションも一緒に暮らす為に借りたものだし・・・」
もう年末だって近いのに、今から引越も大変だろう。
「あの、それ、何で・・・って、聞いてもいい?」
「・・・正直、よくわかんない。だから、私の何かが悪かったんだろうと思ったんだけど・・・。それもよく分からないの。出会って、二年でしょ。あっちに急かされるみたいに同棲して。私は事実婚でもいいし結婚しなくてもいいって言ったけど、ちゃんとしたいからって結婚しようって言われて」
それから、一度結婚し、離婚した事があるとも。
結局、前回の結婚も、彼の浮気が原因らしい。
猛烈に仕事もするけど、その分、遊び上手でもあり。つまり根が浮気性。
だからこそ年下の恋人を羽振りよく甘えさせてくれる、そんなタイプ。
そういう男に選ばれた、というのは嬉しかったから。
それから自信もあったのだ。
もう浮気なんかさせないと。
「もう、本当。いきなり。・・・だってさ、毎週末、旅行に行ってたくらいなんだから。先々週も京都行って来たばっかり」
「・・・いきなり土下座されて、慰謝料・・・手切金て言われて。片手分貰って。来月中にマンション出て行けってさ。・・・つまり他に女ができたのか。・・・・前からいたのか」
彼が見積った
「・・・だからごめんね。皆にも、謝らなきゃ。
「・・・うん、いいよ。皆、わかってくれるよ」
ただ、悔しいし、悲しかった。
「・・・本当、何でなんだろう。・・・でも、その彼氏が悪い事と、
「・・・ありがとう。・・・・私もそう思う」
安心したかのように、スープが
「・・・なんかもう、お酒飲みたい気分。どうせ今日、この後、買い物行かないんだし、私、あの美味しそうなの飲んでみたい。・・・いいですか?」
カウンターの果実酒の瓶を示す。
「はい。何にしましょうね。二種類ミックスしてソーダ割りでもいいし。それからね、このスパイスのお酒、ミルクティーで割るとチャイっぽくなってね・・・」
「チャイ大好き!じゃあ私、それの冷たいやつで」
きっと、そんなすぐに立ち直ったりは出来ないから。
無理をしているのだろう。
とにかく
「・・・じゃあ、私、その
「じゃあ、
しばらくして、
「うわ、おいしそう!ああもう、今日はここで飲んじゃう!・・・あの、どうせ聞こえてたと思うんで。・・・何でだと思います?だって、私、ついこの間、京都の縁結びの神様に行ったくらいなのに・・・。良縁祈願までして来たんですよ?なのに全然効かないんだもんなぁ!」
縁結びで有名な神社はカップルや女性でいっぱいだった。
「・・・・私、経験豊富なスナックのママさんとかじゃないから、いいアドバイスとか何も言えないんだけど・・・。ほら、ええっと、KKN?」
「え?」
「神神ネットワーク?みたいな?多分、それ本当に効いてるのよ。良縁結びの神様なんでしょ?だから、良縁じゃ無かったんじゃない?」
無神経な事を言う人だな、と
「神様、これじゃない!!って、悪い縁をブチって切って。違う良い縁をぎゅって結んでくれたのよ。今後に期待してたらいんじゃない?」
自分たちより年上であろうに、なんて呑気と言うか、真剣味が足りないと言うか、と
しかし、
「もう、何笑ってんのよ・・・。私、その人、全然、許せない」
「だって。なるほど、そうかもよ。あんないきなりズバンだもの。あの男、人間じゃない、鬼、なんて思ってたけど。・・・そっか、人間業じゃ無かったのかもね」
「・・・やるだけやった人の発言よね。あなた頑張ったのね。だからきっと、神様も誠意見せたのね」
でも、たくさん泣いたんでしょうね、と小さく付け足す。
さて、と
「あったかいのだとね、りんごとこのスパイスのお酒とバター混ぜるとアップルパイみたいな味になるのよ。あと、ブルーベリーのもソーダ割りにすると色がきれい。・・・デザートも
「えー。どうしよう。全部美味しそう・・・。今後ゴタゴタしそうだから。体力気力つけておかなきゃなあ」
年上なんだし同じ女性ならば、もっと、相手を打ち負かすような裁判とか、制裁を与えるようなそういうアドバイスをしてくれてもいいのに。
ドアベルの音がして、数人の客が入って来た。
「いらっしゃいませ」
「・・・三人なんだけど大丈夫?」
「お、スープちゃん、今日は出迎えてくれたのかぁ」
「やだ、可愛い!本物の招き猫いるの、この店!」
いらっしゃいませ、と言うようにスープが短く鳴いて喉を鳴らした。
「
「え!?そう言うのアリなの?じゃあ、私、お肉あげたい!それで私のテーブルについて欲しい!」
「無いですよ、そういうシステム・・・。じゃあ、改めてごゆっくりね」
そう挨拶をすると、
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