第14話 完全に惚れる少し前

※田島愛花視点


 放課後。


 今まで学校生活で感じたことのない恐怖や奇妙さを経験した私は普段と比べて格段に疲労していた。


 それも私に対する闇野君の不気味な行動のせいである。彼の奇妙な行動は留まることを知らない。


 そんな闇野君の行動に少なからずダメージを受けた私は今日も森岡君と一緒に帰路に就く。


 だけどいつも通りには行かない。


 なぜなら闇野君は私と森岡君の後ろをストーカーするように追跡しているから。


 私はチラッと背後に視線を移す。


 自然と闇野君と目が合う。


 それだけで闇野君は嬉しそうにヘラッと不気味な笑みを浮かべる。


 その彼の笑顔が私の心に恐怖を一段と植え付ける。


「うん? 田島さんがどうしたんだ? 後ろでも気になるのか? 」


 私の変な様子に気が付き、森岡君が少し気になった様子で尋ねる。


「う、ううん。何でもないよ。ちょ、ちょっと背後を確認しただけだから」


 私は瞬時に思い付いた大したことない理由を森岡君に伝える。


「うん? そうなのか? 何もないなら良いけど」


 森岡君は少し納得が行かないように首を傾げながらも私に対して深く追求しない。


 森岡君なりの配慮かもしれない。


 今はその配慮が要らない。


 私に理由について追求してほしい。そして、闇野君によって植え付けられた恐怖からか私を救い出して欲しい。


 でもそれは叶う見込みがなさそう。見た感じで分かるから。


「それと。例の漫画に関する話なんだけど」


「うん…」


 私は上の空で『君との距離、秒速5センチ』に関する会話を田島君と交わす。普段は楽しくて仕方のない話題なのに。今日は落ち着かずに話が殆ど入って来ない。


 そうこうしている内に、私と森岡君はいつもの別れ道に到着した。毎回、この場所で私と森岡君は自宅に帰るために別れる。


「ちょっと。別れる前に用事を済ませても良い? 」


 突如、森岡君が真剣な表情で私に尋ねる。彼の言葉には意味深さが含まれている気がした。


「ちょっと悪いな。でも流石に見逃せなくてね」


 森岡君は真剣な表情で後方に視線を向ける。そして、睨み付けるような眼光を作る。


「ねぇ。さっきからずっと俺達の後ろを追っているみたいだけど。何か用でもあるの? 」

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