第12話 怪しい影
※田島愛花視点
誰かの気配を背後に感じる。
私は得体の知れない恐怖を覚えながら、自宅へと歩を進める。
森岡君といつもの場所で別れた後、私は1 人で帰路に就いていた。
そんな私の跡を追う人物に気が付いたのは、つい先ほどだった。
怪しい気配と足音が私を追跡する感じ。勘違いではない。その自信が私にはあった。
ど、どうして。追ってくるの? もしかしてストーカー?
ストーカーかもしれないと思うと、想像すると心が恐怖でゾッとする。自然と全身に悪寒が走る。
「と、とにかく。逃げないと」
私は怪しい追跡者から逃げ切るために駆け足で前方に進む。
直感的に自宅を知られてはいけないと思い、普段とは異なる帰り道を進む。
謎の追跡者も私に合わせて逃がさないように足のスピードを加速させる。
その気配に気づき、私は必死に歯を食い縛って逃げることに徹する。
だけど追跡者の足は私よりも速く距離はグングン縮まる。
「はぁ。はぁ。ちょっ。ちょっと待ってよ」
追跡者にとうとう追い付かれ、私は相手によって手を掴まれてしまう。
「っ!? 」
私は反射的に追跡者が存在する後方に視線を走らせる。
「え!? 闇野君? 」
私は知った顔の人物が追跡者だったことに驚きを隠せない。
なんと私を追跡していた人物はクラスメイトの闇野君であった。
目に掛かる長い前髪が特徴的な長髪にヨレヨレの制服を着るクラスでも地味な部類に属する生徒。
そんな闇野君と私は今まで1度も会話を交わしたことがない。なぜなら会話をするような間柄ではないから。
だから、そんな接点の無い闇野君が先ほどまで私を追跡していた事実に驚きを隠せない。その上、追跡の理由が分からないことに少なからず恐怖や不安を感じる。
「あ、あの〜。1つ聞きたいことがあったんだけど。た、田島さんは漫画やアニメが。す、好きなの? 」
闇野君は緊張した面持ちで私から目を逸らしながら、辿々しい口調で言葉を紡ぐ。
「う、うん。それはそうだけど」
私は出来るだけ早く話を切り上げたいために、必要最低限の言葉だけで返答する。
「そ、そうなんだ。やっぱりそうなんだ〜。……僕とおんなじだ〜〜」
闇野君はボソボソと呟くと、嬉しそうに不気味な笑みを浮かべる。
私は闇野君の嬉しそうな不気味な笑みに不快感と恐怖を感じる。彼の笑顔には裏というか狙いが隠れているように私には見えた。
「それで。僕も漫画やアニメが好きだから。ちらちょっと何処かで、お、お話でもしない? 」
闇野君は相変わらず緊張した様子で、辿々しい口調も変わらずに私を誘導するように誘う。
私は、この誘いに乗ってはいけないと瞬時に直感で理解した。
「ご、ごめん! 私、用事あるから!! また今度ね!! 」
私は闇野君の隙を突き、直近の曲がり角の道に入り込みエスケイプする。
「あぁ。ちょ、ちょっと待ってよ。田島さん。あぁ〜。行っちゃった。でも、また今度って言ったもんね。ぼ、僕にもチャ、チャンスはあるってことだよね? 」
私に取り残された闇野君は期待を寄せるようにヘラッと喜びの微笑を溢した。
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