第11話 跡を追う存在
※田島愛花視点
「なぁ! 愛花。今日、一緒に帰らないか? あと前に漫画貸してくれるとか言ってなかったっけ? 」
竜也君が珍しく私を帰宅に誘う。それに大分前に話した漫画のことを今ごろ話題に出して来る。
遅い遅すぎる。本当に今更って感じ。なんで今になって聞いてきたんだろう? もっと前に聞くべきだったはずなのに。
「ごめんね。今日は森岡君と2人で帰るの。あと漫画を貸す? 何の話かな? 私そんなこと言った記憶ないけど」
私は竜也君からの帰りの誘いを断った上で、漫画の件については記憶にないと、とぼけて見せた。
「お、おう。そ、そうか。森岡と一緒に帰る予定があるんだな。…それは知らなかった。それに漫画の貸す件について愛花は覚えてないのか。う〜ん。俺の勘違いなのかな? 」
竜也君は脳内の記憶を掘り返すように、首を傾げて両腕を組む。悩んでいる様子だ。
「うん。多分そうだと思うよ。私、記憶力には自信があるから」
私は素っ気なく答えると、竜也君の返事を待たずに森岡君の席に向かう。
「森岡君! お待たせ!! 今日も一緒に帰ろ!! 」
私は竜也君への態度とは異なるテンションで森岡君に声を掛ける。
彼の顔や後ろ姿を目にするだけで、不思議と気分が高揚する。
早く会話をしたい出来るだけ長く一緒に居たいと思ってしまう。前の竜也君に対して抱いていた感情のように。
「ああ。いいよ。帰りの支度を丁度終えたから行こうか」
森岡君は普段通りに余裕のある態度で微笑を浮かべる。この表情が私にとって愛おしくてカッコよくて見える。
「うん! 早く行こ! 」
私は森岡君と横に並びながら教室を後にする。
一方、竜也君は私と森岡君が教室を退出する後ろ姿を目で追っていた。
そんな姿が私と森岡君が一緒に教室の後ろの戸に見える間に見えた。
もしかして何か複雑な感情を抱いているのかな? まさかそんなことないよね。鈍感な竜也君だもん。
私は、そんな竜也君を心配もせずに森岡君と共に校内の昇降口へと向かった。
一方、教室の廊下外。
「まさか。あの田島さんが漫画やアニメが好きだったなんて。同士だ。僕の同士だ。最高じゃないか」
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