第30話 青葉塾にて 11
その視線はどこか遠く、まるで
「彩乃にフラれたら、もうヤケクソだ。こうなったら真理子先生でもいいくらいだよ、俺は」
近くで参考書を開いていた
「やっぱり、辛うじて年増とはいえないラインってヤツですか。真理子先生はたしか6歳年上ですよね」
悠斗は驚いたように顔を上げる。
「えっ、辛うじて年増とはいえないラインって……遥花、お前、もしかして
遥花は片手を頬に当てて、いたずらっぽく笑った。
「他人様って、
「のりおを1文字ずつ……は・る・か……えええっ!」
悠斗の声が思わず裏返った。
「ようやく気づいてくれました?」
「お前、まさか……遥花が紀雄ジジイだったのか!」
遥花は笑みを浮かべながら、少し肩をすくめる。
「改めまして、辛うじてブスとはいえない遥花です」
「ちょっと待て。あのジジイのコメントは全部お前が考えたのか!」
「もちろん。『
「ああ、今思えば、確かにお前の言いそうな事だったな」
悠斗は頭を抱えた。
「今年一番の衝撃だよ、俺にとっては」
「光栄です、と言っていいのかな」
「もうフラれたことなんかどっかに吹っ飛んじまったよ」
遥花は、まるで予想していたかのようにクスッと笑った。
「あら、それは残念ですね。フラれてからの方が先生の小説に深みが出てきたな、って喜んでいたのに」
「なんだよ、その変態的快楽は」
「それに先生がフラれたら、私にもチャンスが巡ってくるかもしれないし」
「えっ……」
遥花は軽く手を振りながら立ち上がった。
「じゃあまた」
悠斗は慌てて立ち上がり、彼女を引き止めた。
「ちょっと待ってくれ。お前、1つだけ間違っているぞ」
振り返った遥花が、いたずらっぽく微笑む。
「なんですか?」
悠斗は真剣な表情で彼女を見つめた。
「お前はさ。全然ブスじゃねえよ」
「は?」
「なんだか彩乃よりずっと綺麗に見えてきた」
「なんですか、それ。冗談はやめてください!」
「冗談じゃねえよ。きっと目が悪くなっちまったんだろうな、俺は」
遥花は呆れたようにため息をついた。
「私なんか、辛うじてブスとはいえない女ですよ」
「他の奴らにはブスに見えてていいんだよ」
「それ困ります。だったら先生、責任取ってください」
「責任取るってどういうことだよ」
「私と付き合ってくれるとか」
「そんなこと、するはずねえだろ」
「はあ?」
悠斗はにっこりと笑い、言葉を続けた。
「ややこしい手順は全部すっ飛ばして俺と結婚しようぜ」
「はああ?」
「勢いだろ、結婚ってのは。お前が教えてくれたんじゃないか」
遥花は少し眉をひそめ、微妙に赤くなった頬を隠すように視線を落としながら、ぽつりと言った。
「先生……それってどこまで本気なんですか?」
悠斗はその言葉を受け、軽く肩をすくめながらも、真剣な瞳で遥花を見つめた。
「これからは『先生』と呼ぶな。『悠斗さん』か『あなた』と呼んでくれ」
遥花はどこか呆れたように、でも少しだけ照れくさそうに微笑む。
「……じゃあ、悠斗さん。よろしくお願いします」
悠斗はその言葉を聞くと、思わず笑みを浮かべた。
「やっぱり『あ・な・た』の方がいいかな、
遥花は思わず頬を赤く染め、照れたように視線をそらしながら答えた。
「それ、ちょっと困ります」
悠斗は軽く肩をすくめ、笑いながら言葉を続けた。
「いやいや、他の奴の前では『先生』でいいからさ」
遥花はくすっと笑うと、悠斗の耳元に顔を寄せ、小さな声で何かを囁いた。
悠斗は一瞬きょとんとしたが、すぐに満面の笑みを浮かべて叫ぶように言った。
「うおーっ、やっぱりこっちの方がいいな!」
遥花は慌てて彼の肩を軽く叩きながら、少し怒ったような声を上げる。
「もう、やめてください。恥ずかしいじゃないですか」
その仕草に悠斗はさらに嬉しそうに笑い、静まり返った図書館に二人の声が優しく響く。
窓の外には瞬く星々が広がり、二人の未来を祝福しているかのように輝いていた。
(「図書館の恋愛方程式」完)
★ 読者の皆様。といっても、数人のようですが……。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。とにもかくにも完結させる事ができてホッとしています。ラブコメというのは私にとって未知のジャンルだったせいか書くのに苦労しました。明日からは新たに小学生向けの短編「光る貝殻と虹色の真珠」をスタートしますので、引き続きよろしくお願いいたします。
図書館の恋愛方程式 hekisei @hekisei
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