名付けてくれよ、おいらの名前を!
「
医者であるルートヴィッヒは目を丸くしていた。
「なんじゃ、おぬしは!」
「おいらの召喚者か?」
「何?」
ルートヴィッヒは
「おあいにく。私はしがない
「そうなんだ! なかなか召喚されないから、召喚士のピンチにかけつけてきたんだぜ!」
「なんと。ということは、
ルートヴィッヒは薬の
「ステラ? この子の名前か?」
「おぬし、紋章はあるか?」
「あるよ! これだ!」
聖獣は
「ふむ」
「やはり、そうか」
「おお! ステラってやつが、おいらの召喚者か!」
「そのようじゃな」
「なんで、おいらのこと呼んでくれないんだ?」
聖獣はむくれた顔のまま、ステラの顔を覗き込んだ。やせ細っている少女は
「もしかして、体が弱いのか?」
「ステラは生まれてから、この部屋から出たことが無いんじゃ。起き上がっても、あまり長く歩けないんじゃよ」
「どこか、悪いのか?」
「エーテルが足りないんじゃ」
「そんなあ!」
聖獣には聞いたことがあった。たしかエーテル
「だったら、おいらのマナを分けるよ」
「そんなことが出来るのか?」
「おいら、優秀だからね」
聖獣が目を閉じると、額から角が生えだした。一角獣のようなその角からは、眩い光が溢れ出した。
「起きて、ステラ! おいらの召喚士!」
「君が必要なんだよ! おいらの召喚士!」
聖獣の呼びかけに答えるように、ステラの身体が光りだした。マナが
「なんてことじゃ。本当にエーテル欠乏症が治っていくようだ」
ルートヴィッヒは
「ん…………」
「ステラ、大丈夫か? 気分はどうじゃ……」
「うん。とっても、あたたかいよ」
ステラの瞳は赤であり、まるでルビーのように燃えていた。
「おいらが助けたんだい」
「聖獣? 先生の聖獣が、私を助けてくれたのですか?」
「いや、私のではないよ。君の、聖獣だそうだ」
「私の……?」
聖獣は
「初めまして、召喚士さま!」
「……初めまして。ステラです」
「やっと会えた! 召喚士さま!」
聖獣はステラに抱き着くと、その
「でも私、まだ呼んだことが無くて……」
「そうだよ! 呼んでくれないから、ピンチにかけつけたんだい!」
「そうだったの。ごめんなさい。私ね、生まれてから病弱で」
「それも今日で終わりだよ! ほら、立って!」
聖獣の呼びかけに応じ、恐る恐る頷いたステラは布団を捲った。やせ細った体が露わになる。
「ゆっくり立ち上がるんだ。おいらが支えるよ」
「ありがとう」
ゆっくりと立ち上がったステラは小柄ながら、聖獣が支えなくともしっかりと自分の足で立つことが出来た。
「すごい、立てました。歩けそう!」
ステラは嬉しそうにゆっくりと、一歩一歩を
「先生も、いつもありがとうございます。私、もう大丈夫みたいです」
「そうかそうか。良かった……。
「ステラのご両親は、もういないのか?」
「そうなの。私ね、
「じゃあこれからは、おいらと二人ボッチだな!」
聖獣は笑いながら青い炎を
「ふふふ。ありがとう、ねえ。きみのお名前は?」
「何を言うんだい」
「そうじゃよ、ステラ。聖獣は自らの名前を
「そうなんですか! どうしよう、
ステラは困った表情を浮かべると、聖獣の頭をゆっくり
「私、
「いや、
「……笑わない?」
ステラは
「笑わない!
「ええ! どうしよう、そんなたいそうな名前……」
聖獣は
「あのね。すごくね、青くて素敵だなって思ったから……」
「ああ、おいらの毛並みは
「だから……。その……」
「うん!」
聖獣は待ちきれんと言わんばかりに前のめりだ。
「ブルー」
「え?」
「ブルーで、どう?」
「…………ブルー」
聖獣は聞き返しながら、わなわなと
「すっげーかっけえ名前だ!」
「え」
「ブルー! おいらは今日からブルー!」
「え。あの……」
「ブルー! ブルーだ! おいらはブルー♪」
聖獣ブルーはご
「目指せ、星獣! おいらはブルー!」
この日、ブルーは晴れて聖獣となった!
使役されたい召喚獣と、使役したくない召喚士ちゃん(仮題) Lesewolf @Lesewolf
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