《第一部》前篇

緑の森の中、竃繼村かまつむらは、ひっそりと聳えていた。

四方を神社が囲み、不思議な印象のその村に美波は生まれ育った。

彼女は高校卒業を機に、都会に進学するため村を後にする。都会の喧騒に戸惑いながらも、新しい生活に少しずつ慣れていく中、ふと故郷のことが懐かしくなり、地図で竃繼村を見てみることにした。

彼女は、目を凝らし、故郷の県内をくまなく見る。

となりまちの瑳鏖地区さみなちくは見つかるのに、竃繼村は何度見ても見つからない。

たまたま載っていないだけかもと、美波は思い直し、

インターネットで「竃繼村」と検索する。

すると、竃繼村、と書かれたインターネット掲示板が目に止まった。

サイトをクリックし、読み進めていく。

竃繼村は、古くから伝わる都市伝説の村であり、実在しない場所だという。インターネット上には、竃繼村に関する様々な噂が書き込まれていた。村には恐ろしい呪いがかけられており、村に足を踏み入れた者は必ず不幸になる。村には悪霊が棲みついている。などの様々な噂が囁かれていた。

美波は、そんな噂を信じるつもりはなかったが、心のどこかで不安を感じていた。学校が休みになり、彼女は実家へ帰ることにした。

タクシーに乗り込み、山道を昇る。そして見覚えのある道に着くと、彼女は歩き出した。

村に続く獣道を歩いてゆく。

「あれ?」

彼女は朽ちた神社の前に立ち止まり、左右を見渡した。村に続く道がないのだ。

御参りした後、別の道を探そうと思い立ち、参道に足を踏み入れる。

その瞬間、美波の意識は遠のき、そのまま倒れ込んだ。

そして、息の音は、地の底から呻くような叫びと共にとまった。

美波の遺体は、誰にも発見されず、神社の片隅で朽ち果てていく。

美波の怨念は、生前の形を象る霊となり、隣町の瑳鏖地区を彷徨う。

美波は、街のものを次々と惨殺し、そこは血の海と化した。

美波は最後の一人を殺すまで、地区を彷徨い続けるのだった。

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ーー終わらない惨劇ーー《如月幽吏の短篇集》 如月幽吏 @yui903

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