隣に殺人鬼が住んでいた。

@amasaki0605

その日、事件は起きた

 これは、三寒四温に苦しめられる頃合いの話である。休みも終わって程々に時間の経っているはずなのにだらけていた私は、父により叩き起こされることとなった。


「おい、起きろ。湖で事件があったらしいぞ。」


 どうだっていい。何処の誰が被害に遭ったのかは分からぬが、私の休みを邪魔するな。と、この時は不謹慎にも自身を優先するような考え方をしていた。我ながら最低としか言い様の無いが、今その状況になろうとも同じ事しか考えられないだろう。

 そんな私とは逆に、父はこういった話題が大好物である。今風に言うなら「ミーハー」なのだ。よくテレビに映るような野次は父の様な人間なのだとつくづく思う。



 翌日、速報として新たな情報が解禁された。犯人が分かったというのだ。事件の犯人は外国籍の人が集まる、通称「多国籍グループ」のメンバーで、被害に遭った人もそうであったらしい。彼らに対して、父と二人で「悪そうな顔だね」等と勝手な偏見を語っていた。しょうもない事を語っている私達の方が悪役顔だったのか、通りかかった母がギョッとした後素知らぬ顔で通り過ぎた事は忘れていない。

 母の態度に不貞腐れていると、パッ、とテレビの画面が映り変わる。そこには我が家の隣に建つアパートが、モザイクと共に映っていた。右上の字幕には「犯人ら、犯行直前に大人数で集まりか」の文字。


 どうやら犯人は、我が家の隣でお泊まり会をしていたらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隣に殺人鬼が住んでいた。 @amasaki0605

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画