ラブレター
嬢
一枚目の便箋
どんな出逢いだったか、思い出せない。初めて顔を合わせた時に、あなたは私を認識はしてくれたと思う。でもね、多分私があなたを気に留めてなかった。あなたは心地よく私と距離を取っていた。あなたが意識的に遠いところを歩いていたけれど、私はマイナスなイメージを抱えることもない。無味無臭な関係だったというのか。
いつそれが変化したのかも、思い出せない。でも一つだけ記録に残っていて、私の転機になった日がある。2023年の1月30日。ずっと好きだった男の子に告白した日。あなたはこの話を知っている。もう、終わりにしたかったんだと思う。ずっとずっと、私がセロハンテープで留めていた縁を、剥がした日。きちんと、ごみ箱に入れられた日。
軽い女、みたいになってしまうけれど。この日から私はあなたに対して感情を抱えるようになった。でもそれは、好意とかではなかった。ただちょっと気になる。みんな私の方を向いているとき、一人自分の方を向いている。それがどうも、気になった。あなたはもう、この時には私を好いていた。うれしい。訳あって中途半端な時期に新しい環境に行った私に友人はいなかった。でも、不思議と寂しいと思わなかったのはあなたのおかげなのかも。遠いところにいながら、私を見てくれた。たまに、手を貸してくれた。そして私は、あなたを描くことを始めた。たくさん描いた。今も描いている。筆を動かして、名前の無い感情を形作る作業を始めた。
ラブレター 嬢 @onigirimann
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