そして歯車は回り出す

なんか心地いいな


俺の身体は水に浮いているような感覚を覚えた


『マスター起きてください』


気を失う前にも聞いた無機質な声が響く


「ここは?」


俺は目を開けるとそこには真っ白な空間が拡がっていた


『ようやくお目覚めですか、マイマスターノア様』


「おいマスターってどういうことだ?なるべく分かりやすく説明を求む」


『ここはマスターの精神世界です。ここまで真っ白な心を持っているとは少々驚きですがね。』


精神世界か現実味のない話だな


『マスターは召喚士の本来の目的というのはご存知ですか?』


「本来の目的?俺は今まで様々な文献を読み漁ったけどそういうのは聞いたことないな」


『召喚士というのは神獣もとい神の御使いなのです。神命神からの命令と言った方がわかりやすいですね。それを成就させるために神の力を現代に召喚して戦うのです』


なるほどよくわかんないや


『まぁ分かりやすく言うと、偉い人が部下に自分の権力を使っていいから成功させてこいって感じです』


「それならわかりやすいな、けどそれじゃ力を悪用する輩もいるんじゃないか?」


『そうですね、それが召喚士を衰退させたひとつの要因でしょう。だけどマスターは神代の召喚術を使うにふさわしい人間です』


俺が?ふさわしい?


「そんなわけないよ、もし力を悪用したらどうするの?」


すると彼女は


『そうなることは未来永劫存在しえないはずです』


「なぜそんなことがわかる?」


『運命神からのお告げです。的中率は絶対です』


信用はされてるのか


「ところでお前は何もんなんだ?」


すると少し声色が上がって


『それはマスターに使える常駐型ナビゲーションシステムのセラです』


なびげーしょんしすてむ?なんだそれは俺は聞いたことがない


「セラはこれから俺と活動を共にするのか?」


『はい、正確には私と神獣のみんなですけどね』


そういえば気を失う前に狼を召喚したはず


「現実はどうなってる?」


『リルちゃんのことですか?あの子なら大丈夫ですよあんな魔物屁でもないです』


なんかすごい信頼を置いてるんだな


「そろそろ俺も現実に戻りたいんだが?」


すると


『そろそろ魔力が回復する頃なので目が覚めますよなのでまた現実で話しましょう』


そういい俺の意識はまた微睡みの中へと落ちていくのであった




目が覚める見知らぬ天井が視界に広がる


ここは病室のようだ


俺は顔を動かし周りを見る


「うわっ!?」


左側には純白の毛並みを持つ狼


右側にはオーガに襲われそうだった少女が眠っていた


『私もいますよ?』


頭に響くセラの声


喋ろうとするが声が出ない


『この様子を見ると数日間目を覚まさなかったのでしょう』


マジで?


『大マジです、マスター私との会話は念話で話せるので声を出さなくとも話せます』


教えてくれてありがとう、教えてくれなきゃヤバいやつ認定されてたよ


すると少女が目を覚ました


目を覚ました俺を見て涙を流していた


「あの!あの時はありがとうございました!あの時あなたの召喚獣がいなければ私はオーガの慰みものになっていたでしょう。ほんとにありがとうございます!」


とても元気な子だ


俺は自然と彼女の頭を撫でていた


頭を撫でられた彼女は頬が朱色に染まる


「や、やめてください恥ずかしいです...」


そうだなこんなに気品溢れる少女の頭を撫でるのは相当不躾だな気をつけよう


俺は自分の喉を指さし水が欲しいジェスチャーをする


「あ、ごめんなさいそうですよね5日間も眠っていたのなら喉がカラカラですよね。看護師さんにお願いして水を取ってきてもらいましょ」


そこから数分水をもらい少しずつ飲み干していく


「水ありがとう」


俺はそう一声かける


「いえいえ、こちらこと命を救われた身なので少しはお礼させてください」


とても礼儀正しい子だな


「あなたの名前は?」


俺はそう尋ねる


「私はアルフィン・ベスターです」


ベスター?どこかで聞き覚えが


「もしかしてベスター王国の第2王女様!?」


ベスター王国とは今ノアが住んでいるキュリア公国の隣に位置している国だ。一応キュリア公国とベスター王国は同盟を結んでいるためとても仲が良い


すると狼の方も目を覚まし俺に飛びついてくる


『あるじー無事でよかったの!』


お前も喋るんかい!


「リルお前が守ってくれて助かったよ」


俺はそういい狼を撫でる


『むふー!リルがえむぶいびーなの!』


えむぶいぴーというのは何か知らんが喜んでくれてるようでよかった


あっこのもふもふ癖になるな


それからアルフィン様と話しまた今度ベスター王国に招待するとのことだ俺は断ったのだが


「女にはやるべき時があるのです!」


といい引かなかった


なんか召喚士の仕事ばっかで生きる希望を見失いそうだったけどこうして誰かのためになれたなら俺は満足なのかもしれない。


これからは楽しく過ごせるといいな


俺は自分に吹く新たな時代の風に思いを馳せるのであった

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召喚士って響きいいよね〜ある事を機に頭角を現した召喚士の珍道中 ナリゾー @kamui0327

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