第20話 矜持
なんだか最近、学校に行くのがめんどくさくなってきた。
理由は分からないが、きっと慣れない生活に疲弊したんだろう。
もう一度、不登校になってみるか……。
――そんな考えで俺はまた不登校になった。
不登校になった初日の夕方、インターホンが鳴った。
まあ大方夏宮だろうなあとは思ったが、やっぱり夏宮だったので、俺は夏宮を自分の部屋に招いて俺はベッドの上に座り、夏宮は立っている。
なので夏宮のパンツが……。
「ちょっと、どこ見てるんですか」
「あ、すまん。つい見えてしまうもので……」
「はぁ……そういうことなら、隣に座ります」
そう言って夏宮は俺の隣の座った。
「で、なんでまた不登校に?」
「……単純に登校するのに疲れたんだよ」
「……あなたが不登校になるたびに、あなたのことを説得しに来る私の気持ちを考えたことはありますか?」
「じゃあ来なきゃいいだろ」
「……!」
夏宮が怒りながら驚いた顔をする。
そもそも、不登校児なんて放置すればいいのに、なんでわざわざ不登校児を無くそうとするのか。
「あなたねぇ……!」
「だって事実だろ。お前がここまでして俺を更生させたい理由が謎なんだよ」
「……えっと、それは……」
「俺はお前に興味ない。だからもうお前も俺のところに来るな。モーニングコールもするな」
「……!」
夏宮が怒ってるのが目に見えて分かった。
顔を赤くさせて涙目になっている。握りこぶしまで作って……。
「私は……! 私は……! ダメダメなあなたが許せないんです!」
「ダメ、ダメ……?」
「不登校児なんて恥ずかしいんです! ダメなんですよ!」
「……は?」
夏宮の発言に、俺はまた堪忍袋の緒が切れて夏宮を押し倒した。
「……っ」
桃花と違って、夏宮は悲鳴を上げなかった。
ただ、怒ったような目で俺をにらみつけるだけだった。
流石は最初来た時に俺に胸を揉ませた女だ。面構えが違う。
「不登校児は理由があって不登校児になってるんだ」
「……っ」
「矜持があるんだよ。それを一方的な理由で否定するな! お前のエゴと偽善を押し付けるな!」
俺は似合わない激情を夏宮にぶつける。
不登校児の矜持? 少なくとも俺はそんな矜持無かっただろ。
自分で自分に対してツッコむ。
夏宮は一瞬で驚いた顔をした後、すぐに怒りの表情を思い浮かべた。
「仮に矜持があったとして、あなたのは矜持ではなく逃避ですよ!」
「……それは否定出来ないな」
「でしょう? だから許せないんです。前にも言いましたが、私はあなたを学校に来させるためなら何でもします。私の胸を揉んでもいいですし……」
「……じゃあ」
俺は重い口を開いた。
「じゃあ、俺と毎日昼食を食べてくれ」
「……分かりました」
夏宮は一度の例外を除いて友達と昼飯を食べているから、これならどうだろうかと思ったが一瞬で了承してくれた。
明日からが楽しみだ――!
「ところで、なんで不登校児をそこまで更生させたいんだ? 答えをまだ聞いてない」
「……端的に言うと、私のエゴです」
「そうか」
「ということで、もう私は帰りますね」
「お、おう……。押し倒してしまってすまない」
「いえ。別に構わないです」
そして夏宮は俺の家から帰っていった。
母さんからは見送れと言われたが、流石にそんな事は気恥ずかしくてできなかった。
次の更新予定
不登校児の俺が学校に登校してみた結果。 月瀬 常夜 @Missing_Wonder
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