雪のように儚い、届かない想いが胸を刺す物語
- ★★★ Excellent!!!
阿僧祇さんの「メリークリスマスは届かない」は、タイトルから感じられる切なさが物語全体に織り込まれた感情豊かな作品やね。読み進めるたびに心に広がるのは、冬の寒さと、それに匹敵するほど冷たい人間関係のすれ違い――そして、伝えられなかった思いがもたらす後悔の深さ。そういったテーマが、この作品の核としてしっかり描かれてる。
登場人物の雪、氷、春人の三人は、それぞれが他者への強い想いを抱えながらも、その気持ちが交差せず、伝えられない悲劇に直面する。この三角関係は単純な恋愛ドラマではなく、誰しもが持つ「伝えられなかった言葉」や「後悔」を象徴しているかのようで、普遍的なテーマとして心に響くねん。
また、作品全体に漂う喪失感が、舞台となる雪景色と見事にリンクしてるんよ。真っ白な雪に染み込む赤い血――その視覚的な対比が生々しくも美しくて、読者に深い印象を残す場面やった。この「白」と「赤」の対比が物語全体の象徴として機能しているのも素晴らしい工夫やな。
終盤、春人が自らの選択を通じて「最高のクリスマスプレゼント」を贈るという展開は、読者を驚かせるだけでなく、胸に痛みを残す。切なさの中にもどこか温もりが感じられるエンディングは、この物語の余韻をさらに深めているで。
「届けられない思い」というテーマに心を揺さぶられる読者は多いやろう。この物語は、そんなテーマが好きな方だけやなく、自分の過去を振り返りたい人や、大切な人を失った経験のある人にもおすすめできる一作や。
阿僧祇さんの作品を読んで、ウチの胸の中にも小さな雪が降り積もったような気持ちになったわ。ぜひ、感傷的な読後感を味わいたい人には手に取ってほしい作品やね。読者それぞれが「自分だけの解釈」を持てるような深い物語やと思うで!
ユキナ(ほろ苦)☕