後日談
大掃除で本棚を片付けながら、昔の絵本を眺めていた。
『ぞうさんともりのびょういん』俺が五歳のときのクリスマスプレゼント。十年経った今見ると、とても小さくて、ボロボロだった。
母親と何度も読んだ記憶がある。今となっては信じられないが。
学校の成績に口うるさい両親とは、今はほとんど会話をしていない。特に母親の、ともくん、っていう俺を気遣うようで色々なものを強制してくる視線に耐えられなかった。
絵本を開く。内容は覚えていた。ところどころ漢字があるが、さして難しいわけではない。幼い俺は何に困ってこれを一人で読めなかったのだろうか。
最後のページに小さな折り紙が挟んであった。緑色の、拙く、しかし丁寧に折られたプレゼントの箱だった。
それをどうしてもらったのか思い出して、自然と口角が上がった。
嬉しかった。今は反抗期でまともなクリスマスも過ごしていないが、幼い俺がもらった、ほんの些細なプレゼントが、それが今まで残っていたのが、嬉しかった。
絵本を閉じると、パタンと良い音が鳴った。もちろん折り紙も挟んだままだ。
「メリークリスマス」
誰にも聞こえないように言ってみると、悪い気はしなかった。
本棚に絵本を戻す。昨晩のからあげの味を思い出した。
ぼくのクリスマス 坂口青 @aoaiao
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