魔王と野菜スティック

トマトも柄

魔王様と野菜スティック


 魔王は悩んでいました。

 今から人間界に向かうかどうかを。

 何故なら今野菜スティックの販売を買うと限定のまんまるかぁーるい!のコラボ商品が手に入るのだ。

 魔王様は悩んでいました。

「そんなに悩んでいるならもう行ってきたらどうですか?」

 幹部からの一言がきます。

「そうは言うけれど、魔王が直に行って驚かす訳にもいかないし」

「けれど人間とは和平を組んでいるからそこまで気にしなくても良いのでは?」

 それでも魔王は悩んでいる様子でした。

「そんなに悩むんでしたら私が買いに行きましょうかな?」

 そう言うと魔王が玉座から勢いよく立ち上がり、

「それは困る!」

「それを言うなら買いに行かないとですね。 数量限定なんですよね?」

「今から行ってくる!」

 魔王は急いで窓から飛び降り、翼を広げ魔王城から飛び立ちました。



 魔王が街の前に着陸し、翼をしまいます。

「このままだと目立ってしまうな」

 そう言って魔王は翼をしまい、自身に魔法をかけます。

 魔王はそこで人間の姿になり、魔王という姿を隠します。

「よし! じゃあ買いに行こう!」

 魔王は人間の姿になったまま野菜スティックを買いに行きます。

 そのまま店に入ろうとすると店には行列が並んでいました。

 すかさず魔王はその列に並びました。

 買えるかなと楽しみにわくわくしていると後ろから親子が並んでいます。

 そうしたら女の子が魔王の服の裾を引っ張ってきます。

「ねえ。 お姉ちゃんもまんまるかーるぃの買いにきたの?」

「そうだよ。 お姉ちゃんもまんまるかーるぃ買うために並んでるの」

「わーい! じゃあお姉ちゃんとお揃いできるね!」

「私も一緒の仲間欲しかったの! 一緒に買おうね!」

「うん!」

 魔王は女の子と話した後に母親に一礼をします。

 そして、魔王の順番がやってきてレジの前で野菜スティックを購入します。

 そして一緒に手渡されるコラボ商品。

 魔王はそれを手に入れて笑みを零します。

 けれど魔王が買った時にレジの前で札が出されました。

 それはコラボ販売終了の札だったのです。

 魔王は驚いたのです。

 そして、後ろを見ます。

 女の子が驚いた表情をだしています。

 魔王はそれを見てむむむと悩み、親の方を手招きで呼んで耳打ちをします。

 すると親が驚いた表情をして良いんですか?と問いたい顔をしている。

 魔王は構わないという表情で頷いた。

 レジにいる店員さんもやる事を察したかのように頼みますよと頷く。

「ではお会計お願いします」

 店員さんが言うと、魔王は財布を取り出します。

「あれ? おかしいな?」

 魔王が財布の中身を探っていますが、お金が出てきません。

「お客様? どうなされました?」

「あ…いや…少し手持ちが足りないみたいで」

「では商品をお渡しする事はできませんね」

「あのーお取り置きってのは……」

「申し訳ありませんが受け付けておりません」

「そうですよね。 すみません、お騒がせしまして」

「こちらこそ誠に申し訳ございません。 では次のお客様どうぞー」

 そして魔王はレジから離れる際にチラッと親子の方を見ます。

 親の方は任されたとこっそり頷きます。

 それに比べて女の子の方は少し困った表情をしています。

 魔王はその2人の顔を確認してからそのまま店を出て行きます。

 魔王は店の外に出て、さてどうしようかと途方に暮れます。

 魔法の光で巻いてる紙を手に召喚し、メモした内容を見ます。

「やっぱり他のとこ今から向かうとなると遠いなー」

 魔王が悩んでいると、先程の親子が店から出てきました。

 そこで目が合い、

「先程はありがとうございました」

 親がお礼を言ってきましたが、魔王は、

「何の事でしょうか? 私は財布を間違えて持ってきてただけですよ」

 それを聞いて女の子が困ってるような顔で魔王を見ています。

「良いのよ。 お姉ちゃんちょっと財布間違えちゃって買えなかったのよ。 大丈夫よ! まだ他の店があるからちょっとそっちに行って見つけてくるから」

 魔王は女の子に笑顔で語りかけます。

 けれど女の子は曇った表情をしています。

「あれ? 魔王様じゃないですか」

 話している途中で遮る声が聞こえます。

 魔王の後ろにスライムがやってきたのです。

 スライムは頭の上にまんまるかぁーるい!のコラボ商品を乗せています。

「ちょうど夜勤明けで職場のメンバーで野菜スティック食べてたんですよ。 何があったんですか?」

 魔王はスライムの頭の上にあるコラボ商品に釘付けになっています。

 スライムは気付いたかのように話します。

「欲しいんですか?」

 魔王は頭を勢いよく頷きます。

「渡しますよ。 どうぞ」

 スライムは近付いて頭の上の物を取れるように近づきました。

 魔王はその物を受け取り、

「ありがとう」

 お礼を言います。

「ちょうど渡そうと思ってたんで良かったですよ」

 そこで女の子も魔王に近づき、凄い笑顔になって魔王とスライムに近付きました。

「やったー! これでお揃いだね!」

 女の子が凄い喜んでいます。

「これで二人とも手に入って良かったね!」

 女の子が笑顔になって改めて親がお礼を言って親子は笑顔で去って行きました。

 親子が去って行くのを魔王とスライムは笑顔で見送っていました。

 そして親子が見えなくなってから、

「魔王様」

「どうしたの?」

「もう少し演技力鍛えた方が良いですよ」

「全部見てたの!?」

「見てるも何もあの時店の中に居たんですからそりゃ分かりますって……」

「忘れて!」

「今から魔王城に帰ってネタにします」

「やめてー!」

 後日、魔王城でしばらくの間ネタにされて魔王は噂の的にされました。




 親子は家路に帰っていると、

「ねえ? 何であのお姉ちゃん魔王様って呼ばれてたのー?」

「さぁ? 何でだろうねー」

「魔王ってとっても怖い角生えてる人の事言うんじゃないの?」

「けど、お姉ちゃんに角生えてなかったよね? 魔王って呼ばれてるだけかもしれないよ?」

「そっか!」

「もしかしたら魔王様は実はお姉ちゃんみたいにかわいいお人かもしれないよ?」

「だったら仲良くなりたーい!」

「そうね。 今度またあのお姉ちゃんに会えると良いね」

「うん!」

 





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魔王と野菜スティック トマトも柄 @lazily

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