アフターピース(Shantipaschat. After Peace)

 Ramaneyya Asu登場。


 彼らへの激しい感動の中にある私が、他に何かを言うべきだろうか。やめておいたほうが、我々のためである。だから劇の意味とは直接には関係のない話題にしよう。


 コハラ(Kohala)は、ナーティヤ・シャーストラで初め、著者バラタの百人の息子のひとりとして名が出る(Nāṭyaśāstra. Ⅰ, 26)。XXXVIには、ナフシャ王の勧進によって地上に降りたバラタの息子たちの筆頭で、補足論文を書いたとある。後代の注釈や別の演劇論書でもコハラがしばしば言及されていることから、ナーティヤ・シャーストラの真の著者はコハラであったと思う。

 スンダリー姫は、『アジアの光』の映画版『Prem Sanyas』(1925)におけるSeeta Deviが私にとってのあの方であった。

https://www.youtube.com/watch?v=18Hp0jlHHfY


 参照したものを記録しておこう。


 インド古典演劇、美学関連では、

『Natyashastra』

https://www.wisdomlib.org/hinduism/book/the-natyashastra

他にWisdom Libraryの『Natyashastra Portal』の典籍群。

https://www.wisdomlib.org/natyashastra

上村勝彦『インド古典演劇論における美的経験 : Abhinavaguptaのrasa論』

https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002034028

『岩波講座日本の音楽・アジアの音楽. 第6巻 (表象としての音楽)』にある島田外志夫『インド古典音楽の美学的裏付け』

https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001960262

『世界文学大系. 第4 (インド集)』

https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000039-I1363829

『礼記』の『楽記』

https://ctext.org/liji/yue-ji/zh

Leo Tolstoy『What Is Art?(1898)』

https://theanarchistlibrary.org/library/leo-tolstoy-what-is-art

Rabindranath Tagore『Creative Unity(1922)』

https://gutenberg.org/cache/epub/23136/pg23136-images.html

『Mricchakatika』のおおむね忠実な上演(5世紀の脚本そのままのギャグが喝采を浴びている!)

https://www.youtube.com/watch?v=LTH11GZ7Wso


 唯物論、自然主義については、

Panchatantra

https://en.wikisource.org/wiki/The_Panchatantra_(Purnabhadra%27s_Recension_of_1199_CE)

Jayarasi Bhatta『Tattvopaplavasimha』

https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.277488

Madhavacharya『Sarva Darsana Samgraha』

https://archive.org/details/Sarva-Darsana-Samgraha.by.Madhavacharya-Vidyaranya.tr.by.E.B.Cowell/

王充『論衡』

https://ctext.org/lunheng/zh

ジャン・メリエ『ジャン・メリエ遺言書 : すべての神々と宗教は虚妄なることの証明』

https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008129419


 「私は生来、人間の間では平和と心の善良さと公正と真理と正義ほど甘美で快いものも、好ましく望ましいものもないと思っていましたし、そうした徳を人々が互いに大事に保つなら、人間自身にとって様々な幸福と喜びの計り知れぬ源となるはずだと思っていました」(ジャン・メリエ遺言書 1)

 「ですから民衆の皆さん、知恵があれば団結してください。勇気があれば全員団結し、皆さんに共通のあらゆる悲惨から自分を解放してください。互いに励まし合い、勇気づけ合って、このいとも高貴、いとも高潔、いとも重大、いとも栄えある企てを実行してください」(ジャン・メリエ遺言書 96)


デービプラサド・チャットーパーディヤーヤ(佐藤任訳)『ローカーヤタ : 古代インド唯物論』

https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000039-I12262733

『中世思想原典集成. 11 (イスラーム哲学)』にあるイブン・トファイル『ヤクザーンの子ハイイの物語』

https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002960164


 アショーカ王法勅については、

塚本啓祥訳『アショーカ王碑文』

https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001221298

Ven. S. Dhammika訳『The Edicts of King Asoka』

https://www.accesstoinsight.org/lib/authors/dhammika/wheel386.html


 コハラが作った『スンダリー姫の心の旅路』の筋は、本編でも示した通り『Mahavagga』10, 2のもとになった説話から取られているだろう。

https://www.wisdomlib.org/buddhism/book/vinaya-2-the-mahavagga/d/doc369989.html


 仏教やジャイナ教、ウパニシャッド等については、もともと学んでいたので全てを示すことは難しいが、

『Acaranga-sutra』

https://www.wisdomlib.org/jainism/book/acaranga-sutra

中村元訳『ブッダのことば : スッタニパータ』

https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000039-I2991016

『Brihadaranyaka Upanishad』

https://www.wisdomlib.org/hinduism/book/the-brihadaranyaka-upanishad

 は何度か参照し直した。


 Kautilya『Arthashastra』はアショーカ王の時代の空気を嗅ぐことができる貴重な書である。いわんや唯物論的な側面も併せ持つ。

https://www.wisdomlib.org/hinduism/book/kautilya-arthashastra


 おや、誰か来た。なんとあれはコハラさんと、スンダリー姫ではないか?

 コハラとスンダリー登場。Ramaneyya Asuと合掌を交わす。

 コハラ「アスさん、お疲れ様」

 私「疲れてなどおりませんよ、あなた方のあの姿を見た今では、私の生きる力が尽きるはずがないでしょう」

 スンダリー「嬉しいお言葉。でもそれは私たちも同じですのよ。あなたが作られた劇が、私たちを輝かせてくれたのです」

 私「いと美しきスンダリー姫、私が作った? なんのことでしょう。私は確かに劇を書きましたが、ただあなた方の姿を見て、それを書き記しただけなのです。皆さんに誤解のないように念のため言っておきますが、この劇は虚構などではなくすべて真実なのですからね」

 スンダリー「そうでした、そうでした」

 私「ときにコハラさん、アショーカ王に頼まれた、ナーティヤ・シャーストラは書き進められたのですか?」

 コハラ「それが、まだほとんど出来ていないんです」

 私「ちょっとちょっと、しっかりしてくださいよ。あれがなくっちゃ私たち芸術家が困るだけでなく、後世の人々は、歩く胃か脳みたいな次第になってしまうんですからね」

 コハラ「それは一大事。では頑張って書き上げるとしましょう」

 スンダリー「アスさん、ご心配なく。主人はちゃんとその仕事に取り組んでいますのよ」

 私「主人? 主人。ひゃあ、あなたの崇拝者には残酷な言葉。でもまあ仕方がないことです。人の幸せを羨むなんて、およそなすべきことでもありませんしね」

 コハラ「アスさん、冷やかしはドリティにでも任せましょう。それより、私たちが示した真理と美とラサは、世界の人々を救ったのでしょうか。役に立ったのでしょうか」

 私「それはここの皆さんがいまこれから取り組まれること。ですから、この辺りでいったん劇を終えましょうか。名残惜しいですが、始まりがあれば終わりがあるもの。さあ、ぜひおふたりが劇の終わりを告げてください」

 コハラ「えっへん、それでは。皆さん、ひとつの劇が終わりました。スンダリー、この上は、何を言うべきだろうか」

 スンダリー「何よりもこのことを。すべての命は幸せでありますように。すべての命は安らかでありますように」

 『真・美・ラサ』終幕。

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真・美・ラサ Ramaneyya Asu @Ramaneyya_Asu

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