欠陥姫は理想を捧ぐ
有栖川 花音
第1話 雲の上の湖で
ただ漠然と、周りと同じように大学に行って。
就職して。
誰かと結婚して。
何の変哲もない人生を送ると思っていた。
高3の冬、僕は第一志望の大学に受かって少し浮き足立っていた。
それがいけなかったのだろうか。
誰かが家に押し入った。
腹部からの激痛と鈍い頭部の痛みを最後に僕の記憶は途切れた。
次に目が覚めるとそこは雲の上だった。
天国かななんてぼんやり考えながら辺りを歩いていると何も無い雲の上に一つだけ、湖が有った。
そこにはとある情景が映し出されていた。
一つ目は制服を着た数名の学生達が楽しげに談笑している情景だった。
特に目を引いたのが金色の髪の少女だった。
彼女の表情は希望に満ちていて、まるで主人公の様だった。
だが、水面が揺らぐとそこには金色髪の彼女と2,3人の先程の情景で共に談笑していた学生達が泣き崩れていた。
水面にどこからともなく一粒の雫が落ちるとまた情景が変わった。
今度は金髪の少女と泣いていた学生達に加え何人か仲間が増えた様で和気あいあいと旅をしていた。
だが、また水面が揺らぐと金髪の少女と数名の旅仲間達が皆屍の上で泣いていた。
恐らく…仲間の誰かが死んでしまったのだろう。
雫が落ちた。
その場面が最後の2場面だった。
まず、金髪少女が皆に讃えられていた。
何か物凄い事を成し遂げた様だった。
皆が賞賛の拍手を鳴らし、少女も微笑んでいた。
でも、水面が揺れて変わった場面は雨の中で絶望と悲しみの入りまじる表情で泣く彼女だった。
全ての情景を見終えると目の前に女性が現れた。
見た目は全然覚えていないが彼女が女神さまだというのは何故か分かった。
女神さまは言った。
「若くして死んだ貴女に、新たな人生と使命を…」
その言葉が終わると同時に視界は歪み再び記憶が途切れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます