9 ここは日本だよな

「ここは日本だよな。何処だ?」

 トモキが荒廃とした原野を見回した。


『レプティリアが4D探査してるから、精神思考で交信してね』

 ヒロが上空を指差して伝えた。

『わかった。精神波で話すぜ』

 トモキが精神波で辺りを探りながら伝えた。今やあたしらの精神波は、あたしら自身と同化したナノロボットによる素粒子時空間転移伝播信号だ。4D探査できる。


『ここは前橋の郊外。榛名山の南東だよ~』

 ヒロの説明にヒロシが答えた。

『オオッ、上毛三山じょうもうさんざんのひとつだな!

 赤城の山も今夜(宵)を限り、生まれ故郷の国定の村や、縄張りを捨て国を捨て、可愛い子分の手めえ達とも、別れ別れになる首途かどでだ・・・』

 ヒロシが見得みえを切ってる。

 大叔父さんじゃあるまいし、なんで、ヒロシはこんな事を知ってるだ?

『失礼な!儂が教えたんじゃ。

 江戸時代後期の博徒(博打打ち)の親分、国定忠治が、芝居や浪曲の中で語ったとされる名セリフじゃよ!』

 大叔父さんが脳裏に現れてそう伝えた。


『オオッ!大叔父さんも、ここの状況が分るのか?』

『ああ、ヒロが実況を知らせてくれとる。気つけて状況を観察すんだぞ』

 何かあったら、儂もスキップするけんね』

『了解。ジロ隊長!』

『では、また』

 大叔父さんが脳裏から消えた。


 トモキが北西を眺めた。山は見えるが、周囲はまさに荒野だ。

『なんでこんなに荒れてんるんだ』とあたし。


 ただちにヒロが伝えた。

『レプティリアの攻撃でこうなったんだよ。

 以前は陸上自衛隊相馬原駐屯地だよ』


 陸上自衛隊相馬原駐屯地には、第12旅団司令部、第12ヘリコプター隊、第12偵察戦闘大隊、第12通信隊、第12高射特科隊、第12化学防護隊、第12音楽隊、第48普通科連隊、第317基地通信中隊、第406会計隊、相馬原駐屯地業務隊が駐屯していた。


『ここに居ると目立つから、シェルターに入るよ。ついてきてね』

 ヒロはあたしら先導して、爆撃で穴だらけになったヘリコプター用飛行場の端へ移動した。眼前に、丸い墳墓のような小山が連なる傾斜地がある。

 ヒロは傾斜地の手前に立った。


『ここの半地下に、野営テント用のシェルターがあるよ。

 外から分らないよう、草木で迷彩してあるんだ。

 テント!って念じてね!』


 あたしらの体内で自己増殖したナノロボットは、あたしらの遺伝情報を基に、あたしら個人に相応して増殖し、ナノロボット自体があたしらその物に進化した。

 既にあたしらには、心の思考による精神波によって、身体形状変化(シェイプシフト)と精神感応(テレパシー)と精神感応による意識記憶操作能力(思考記憶探査と思考記憶操作)、対外的に張る防御シールドが備わり、さらに4D映像探査、スキップ(自己の空間移動と物質の空間転送)能力が現れてる。

 つまり、ヒロがする事と同じ事ができるようになっている。今のところできないのは時空間スキップ(時空間転送を含む)とヒッグス粒子弾の製造と管理だけだ、とあたしは感じてる・・・。

『そうだよ~。今はテントに入ろうね~』

 ヒロがあたしの思考を認めた。


『了解!』

 あたしらは《テント!》と念じた。

 丸い墳墓のような小山が連なる傾斜地は盛りあがり、草木で迷彩されたドームが出現した。


『ウオッ!テントよりトーチカみたいなシェルターだあ!』

『さあ、入るベ』

 あたしは喚いているヒロシに、テントへ入るよう、伝えた。



『ここでの会話は精神波だよ。皆に通信機器は必要ないからね』

 ヒロは皆の頭部と着用してるバトルスーツとバトルアーマーを示した。

 確かに、あたしらはナノロボットと同化して、ナノロボットの装備を身に着けている。これだけでも変身と通信は可能な上、あたしらには同化したナノロボットを通じ、時空間スキップと時空間転送スキップを除いた、ヒロと同等の事ができる。


『了解!』

 あたしらは精神波で入口を開け、テントに入った。


 テントはヒロシが言うように、シェルターのようなドームだった。

 あたしは、テントの内側に手を触れた。なんだこの素材は?それに、支柱が無い!どのような構造だろう・・・。

『ケブラー素材のエアードームだよ。支柱はカーボンファイバーのFRP。必要最小限しか使っていないけど強度は万全だよ』


『トイレと浴室が丸見えだぞ!』

 ヒロシが慌ててる。

『シールドを張ればいいんだよ。バトルスーツとバトルアーマーが無くてもシールドを張れるベよ』

 さすがトモキは落ち着いてる。


『ところで、ヒロ。この未来でレプティリアを壊滅するなら、ヒッグス粒子弾を使うのだろう?』

 手っ取り早くヒッグス粒子弾をセットして元の時代に戻ろう、とあたしは思った。

 同時に、妙な事に気づいた。

『元の世界でレプティリアを壊滅すれば、この荒れて世界は存在しないはずだ。

 なぜ、こんな状況なのか?

『確かにそうだ。なぜこの未来にスキップ(時空間転移)したんだ?

 ヒロ、何を考えてんだ?』

 トモキも懐疑的になってる。



『ここに、他の時空間の世直し監察官がスキップ(時空間移動)してるから合流して、レプティリアの侵略を視察するんだよ。

 目的は、元の時空間でレプティリアを殲滅しても、レプティリアは他の時空間から再びこの時空間に現れるんだ。その実態を確認して欲しいのと、今後、どのような対策をとれば良いか、考えて欲しいんだよ』

 ヒロの態度が大人びてきた。それだけ事態が深刻なのか・・・。


『そうだよ。事態は深刻だよ。

 このテントの窓は偏光強化樹脂だよ。中から外は見えるけど、外から中は見えないよ。

 前橋市内の様子は、バトルアーマーから4D映像探査すれば、脳裏に、前橋の廃墟を確認できるよ』

 ヒロがそう伝えてる間に、あたしらの脳裏に前橋市内の廃墟が現れた。ヒロが4D映像探査した映像だ。


『何て事だ・・・。何でここまで・・・』

 脳裏に現れた映像に、ヒロシがあたふたしてる。


『今まで、レプティリアはヒューマ(人)を操ってたけど、ここでは方針を変えたんだよ。

 ヒューマを壊滅して、レプティリアが支配する世界を創る事に。

 その実態を見るのは、レプティリアがヒューマ勢力を攻撃する夜だよ。

 まだお昼過ぎだから、レプティリアが攻撃した市内を4D映像探査して休んでいてね』

 ヒロは落ち着いている。


 なぜ、ヒロは落ち着いているんだ。未来がこうなってた手の打ちようが無いはずだ・・・。待てよ・・・。ここは未来だ。あたしらの時空間の未来だ。あたしらが居た時空間は、まだ、レプティリアに攻撃されていない。レプティリアを完全排除すれば、未来の時空間は存在しないのではなかろうか・・・。

 だが、他時空間から時空間スキップするレプティリアの本拠地は何処なのか?


『今のうちに、攻撃された市内を4D映像探査しておいてね。

 夜になったら、他の時空間の世直し監察官と合流して、拙攻に出るよ。

 休息しててね』

 ヒロはテントのドーム状空間に、市内の廃墟の4D探査映像を投映した。

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