雪を溶かすほどの…

「雪」と「恋」

僕らは、しんしんと降る雪を眺めながら歩いた。

夜は煌めく光りに包まれる。

隣の彼女は煌めく光の中を少女の様に歩く。


僕は、その数歩後ろを歩く。


彼女がふと立ち止まる。


「ねぇ。「雪」と「恋」と聞いて何を思い浮かべる?」


僕は唐突な質問にすぐには返せず彼女を見つめた。

僕の顔を見つめ返す彼女の表情をじっと見つめる。

だが、言葉が出ず。彼女の表情から目を背ける。

やっと出た言葉は、


「冷たい…恋…かな。」


とつぶやく。


彼女は、たたっと駆け足で僕へ近づく。


彼女は、僕の目の前で手を開き、雪をすくうように手をお椀型にしてじっと待った。


一時もまたずにちらちらと雪が落ちていく。


「私の体温で溶けていく雪。暖かさで溶けていく雪。雪も恋も暖かさで溶けていく。」


僕は、彼女の手をじっと見ながら言葉を聞いた。


「冷たいところから私のところへおちてきたあなたの冷たくなった心、恋が。私の暖かさで溶けて…本来のあなたになってくれますように…」


僕は…手をギュッと握りしめた。

彼女の手は冷たくなっていた。

驚きながらも逃げずに俺を見つめる彼女に


「今度は、俺が暖かさを君に返すから…」


彼女は俺を見つめたままニコッと微笑んだ後、


「…お願いします」


僕たちは、そのまま手をつないだまま煌めく光の中を通り抜けた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雪を溶かすほどの… @wataru-kaiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画