12話 魔物
「嘘ぉおお!!!」
とある場所にある人の手の入っていない山の奥、の裏空間でケイの絶叫が響き渡る。
そのケイは見ているのはスマホの画面。
実はツトゥルや夜鬼の事を調べていたのだ。
まず夜鬼で検索をかけたケイ。
すると出てくるのはクトゥルフ神話の文字。
詳しく見てみると奉仕種族だとかドリームランドだとか聞き覚えのある単語が見られた。
実はケイの友人が大のTRPG好きで、単語だけは知っているのだ。
その単語が意味することは全く知らないが。
ちなみにその友人によってケイのキャラシートがいくつか作られている。
さらにちなみに、ステータスを決めると必ずAPPとINTの値が大きくなり、セッションでは詐欺師のようなポジションに収まることが多いそうな。
さらにさらに。ケイ用に作ったキャラシートを使うと発狂することがとても少ないのだとか。
閑話休題
そして夜鬼を検索しているとイヴ=ツトゥルという単語を発見した。
まさかと思いコピペして検索するケイ。出てきた姿あはツトゥルそっくりだった。
すると邪神やらクトゥルフ神話やら先程と似た単語が出るわ出るわ。
そしてニャルラトホテプの娘あるいは息子という説を見て冒頭の叫び声を発したのだ。
ニャルラトホテプはクトゥルフ神話に明るくないケイでも知っている有名な神だ。
説明不要なトリックスター。その力は強力な神々の中でも最上位に近い。
そんな神の子供。さぞや強いのだろうと思うだろう。
しかし調べた結果、彼(彼女)はそれほど強くない。
攻撃手段がないわけではないのだが、強力な力を持つ神々と比べるとどうしても見劣りしてしまう。
しかしとても知恵があり、賢い神格とされている。
と言うより宇宙の監視者なのだ。
この辺りは親の性質を受け継いでいる。
「て言うことは僕、割と詰んでない?」
せっかくの高レアは戦闘というよりは参謀、指揮官、将軍などの後方の頭脳労働向き。
部下の夜鬼はどうやらくすぐり攻撃か、人を持ち上げて落とすくらいしか攻撃手段を持たないらしい。
その鋭い尻尾ってくすぐりにしか使わないの!?とはケイの言葉だ。
途端に夜鬼が雑魚の雑兵にしか見えなくなってきたケイ。
最初に持っていたあの自信はどこに行ったというのか。
「真面目にどうしよ。このままだと本当にダンジョンマスター生がRTAばりのスピードで終わっちゃう」
頭を抱えて唸るケイ。
一応ツトゥルに攻撃手段はあるようだが、まさかツトゥル一人に侵入者を全て撃退してもらうわけにもいかない。
「うーん……今から夜鬼を訓練して戦えるようにするとか?
でもダンジョン運営開始がいつからか分からないからなぁ」
せめて期限が分かっていればと嘆くケイ。
その夜鬼たちは離れた場所で無垢なる黒の領域効果である全なる黒で遊んでいる。
案外器用なのか自分たちをデフォルメした人形のようなものを作っている。
そんな夜鬼たちを見てふと思う。
「……アイツらどこに住んでたんだろ?」
早速調べるケイ。
「ほうほう。荒野に住んでると。
あ、ドリームランドって場所にも結構行くのね」
次にツトゥルの生息地を検索。
「ドリームランドの中心にいるのね。そこから全宇宙のことを監視してると。
すごいな。どうやってやってるんだろ?やっぱり空間を弄ってるのかな。
ドリームランド……ドリームランド……あった」
どうやらどちらもドリームランドに所縁のある種族らしい。
ではそのドリームランドはどんな場所なのだろうか?
一言で言い表すなら夢の中の世界である。
現実世界の鏡像の世界だが、地理や生息している生物は全然違う。
北方には神々が住まう城が建っている高原があり、西方にはドリームランド最大の都市や魔法の森がある。
東方にはまた別の都市があり、彼方には禁断の地と呼ばれる危険な場所がある。
そして南方には楽園の地があると言われている。
中心には巨大な海域があり、陸地を四方に分けている。
そしてこのドリームランドに入る方法は大きく分けて三つある。
一つ目は夢の中から入ること。
二つ目はアーティファクトと呼ばれる道具を使うこと。
三つ目は現実の世界のどこかにあるドリームランドにつながる扉を探し出して潜る。
そしてドリームランドの大きな特徴として夢見と言うものがある。
夢見とはドリームランドに入った際に夢の知識と一緒に強制的にインストールされる技能だ。
では夢見を使うとどんなことが起きるのか。一言で言うとドリームランドの現実を『改変』できる。
例を挙げてみよう。
りんごが落ちているとして、夢見所持者はそのりんごを拾い夢見を使用する。
すると、そのりんごは武器に変化する。
他にも挙げてみよう。
夢見所持者が敵対者に出会ったとする。
夢見所持者は敵対者に夢見を使用する。
すると敵対者はりんごに変化するのだ。
さらに別の例を挙げてみよう。
夢見所持者がりんごを食べたいと思った。
そこで夢見を使用するとりんごを創造することができる。
武器やりんごだけではない。
その気になれば国を創造する事だって出来る。
ただ、そのまで規模が大きいと一回の夢見では不可能。
複数回に渡って夢見を使用しなければいけない。
「この夢見って技能、領域効果に似ているな」
最初の方にしれっと出た領域効果。
ケイが領域効果のことに気づいたのはスマホとパソコンを持ち帰った後だ。
スマホでパソコンの設置方法を調べて一日かけて設置した後。
ケイは魔王同士のコミュニティがないのかパソコンで探した。
神様的存在が言うには書き込みは魔王同士のものに限るようだが、閲覧だけなら人類側も行けるようだ。
お陰でコミュニティを探すのに少し手間取った。
ケイが見つけたのは有名掲示板の一枚。
【お前ら】ダンジョンマスタースレ Part.8【進捗どう?】と題打たれていた。
そこからダンジョンのことについて議論している板へ飛び、ダンジョンの型と領域効果のことを知った。
そこではダンジョンの型は様々な型があったが大別すると迷宮型、建物型、フィールド型の三つに分けられると自称検証勢が解説していた。迷宮型は字の通り。ダンジョンを展開すると地下に迷宮が作られたらしい。階層は最初から三つ用意されており、罠などは設置されていなかったが迷宮として道は迷うように作られていた。
「何だそれ!お膳立て完璧じゃん!!」と理不尽な差に怒ったケイ。
スレでも割と当たりの部類になっていた。
この型を選択したダンジョンマスターはスレを見る限り5割。半数が選択していた。
続いては建物型。
こちらはダンジョンを展開するとイメージしていた建物がポンと出てきたらしい。
物理的な判定は持っていないのか周りの建物などは壊していないとのこと。
こちらも罠などは設置されておらず更に展開されたダンジョン(建物)も小規模なものですぐに攻略されそうだとスレでの愚痴というか悲鳴が見られた。一応、階層は三つ用意されていたそうなのだが迷宮仕様ではないのであんまり意味はない。
この型を選んだのは4割。
割と選んでいる人が多かった。
そして最後の1割がフィールド型。
こちらはスレで大当たり扱いされていた。
まぁそれも当然だろう。
なんと環境効果が最初からノーコストで実装されていたと言うのだ。
更にダンジョンが展開されたのは地表でも地下でもないとのコメントがあった。
そのコメ主はフィールド型でダンジョンを展開したらしいのだが、ダンジョンに入ると空があったらしい。
コメ主も最初は偽物だと思っていたらしいのだが、風が吹いたので、これは本物だと確信したらしい。
『偽物じゃね?』『ペイントされてますね』『偽乙』『証拠はよ』『証拠弱い』
などのコメントにコメ主は消えてしまったので真偽は不明だ。
もし本当ならフィールド型は大当たりだ。
しかしケイは階層についてのコメントがない事に疑問を覚えた。
自身のダンジョンも階層はなく最初からだだっ広いダンジョンだ。
単純に書き忘れただけかもしれない。
そもそもステージ型と言うのがないかもしれない。
しかし違うとしたら、何か共通点があるかもしれない。
そしてダンジョンの型の事を知ったケイは自身の型を調べた。
出てきた結果はこれだ。
出てきた三つに当てはまらないダンジョンの型。
しかも“異界“型。
もう字面からして強力そうだ。
しかし。しかしだ。
ケイは逆に不安を感じた。
「(だって、あの神様的存在だよ?そんな素直な性格なわけない。
実際[空間の主]も今の所攻撃性能ないから微妙だし)」
果たしてその予想は当たっているのか。
今の所全くの的外れだ。理由は領域効果にある。
先ほどの表示には続きがあった。
領域効果は一つのダンジョンにつき一つだけのもので、そのダンジョンの特徴となるものだ。
その効果は千差万別。ダンジョンの型だけ種類がある。
ダンジョンマスターはこの領域効果によって領域内ではほぼ最強の存在となる。
そんなチートな領域効果。
《全なる黒》の効果は領域内に満ちる“黒“を色々なものに変化させられる。変化後の対象は生物、非生物問わない。ただし変化させるには規模に応じたMPを消費する。
要するに物凄い錬金術だ。しかも生物も一瞬で創れるタイプの。
こんな凄い効果が何とMPを消費するだけで使える。
ケイは確信した。絶対MP消費がえげつないやつだ、と。
しかし実際に使ってみたが、全くMPが尽きる気がしない。
本当に無限に使えるんじゃないかと思うほどだ。
余程消費量が少ないのか、もしくは消費していないのか。
説明にはMPを消費すると書いてあるが、実はダンジョンマスターのみ領域内限定で消費なしにする。
という隠し要素があってもケイは驚かない。それくらいに減っている感覚がないのだ。
なのでMPの消費量を確認したいが、ステータスのどこにもMPはない。
MPくらい見せろよ!!とはケイ魂の叫びである。
そして色々試していると夜鬼たちがケイの真似をし始めたのだ。
ケイも魔物が領域効果を使う事が出来るのか興味があったのでコツを教えた。
すると夜鬼たちも領域効果を使えるようになったのだ。
ちなみに夜鬼たちが最初に作った作品はケイのデフォルメ人形である。
結構可愛かった。
ならツトゥルはどうだと試してもらった所、使えた。
作品のチョイスはアレだったが。
何故か作ったのが顔文字だったのだ。(˶ᐢωᐢ˶)←これを作った。
どうやら情報収集の際に使ったスレで見て気に入ったそう。
「贈呈」と手渡されたが、ケイはどんな表情をすればいいのか分からなかった。
まぁツトゥル自身が好きならいっかと思考を放棄した。
救済計画〜ども、人類の敵役のダンジョンマスターです〜(仮) 祓戸大神 @haraedoookami
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