この学校、ぶっ壊してやんよ

ぼっちマック競技勢

おーい。禿山がやばいことやってるってよ

 僕らはその日を浮かれた気持ちで迎えた。全校生徒300名。私立で、マンモス校のうちの生徒で、今日登校するのは150名弱だ。半分しか来てないのは何もリストラをしようってんじゃない。まぁ似たようなものなのだが。


 俺たちが今からやるのは抗争だ。


 大人へのささやかな反抗だ。


 この腐った学校を洗い流すためのだ。


 ▲


 何もこんなバカなことをしようとしているのは俺たちの代が特別不優秀だったからじゃない。むしろ例年よりは優秀だったと言えるんじゃないだろうか。学年での学力や部活での功績、その全てが平均以上だ。

 中三の佐山なんてテニス全国大会にも行ったみたいだ。

 中二の八代は数学おりんぴっく?に出て日本代表になったみたいだ。日本代表選ぶ大会なのにオリンピックと名前がついているのはどうかと思うのだが...

 まぁそんなのどうでもいい。

 大事なのは俺たちは真面目だってことだ。真面目も真面目、大真面目。


 そんな俺たちに、ある日、大きな変化が襲いかかってきた。


 それは理事会の設立。今まで個々人でOBやら保護者やらが出していた学校への寄付だが、その多くを理事会が担うようになった。理事会に入ると自動的に会費がとられ、その全てを学校に寄付する仕組みだ。


 寄付の手続きがよくわからないが、学校を応援はしたい、というリッチな方々にはウケが良かったみたいで、現在では500名という学校生徒の二倍ぐらいの人数がそこに入っている。


 その理事会の中でも色々と階級があるようで階級が高くなれば高くなるほど払わなくてはならない金額は大きくなるが、学校にはあれやこれやと口を出しやすくなる。

 例えば学校の校長の決定とか。


 以前までいた校長は理事会設立から数ヶ月して、新学期になったら辞任させられていた。そして次に校長の座に座ることになったのは禿山秀人はげやまひでと。(いかにもはげてそうな名前だが始業式の時なんかや無論学校にいる時もちゃんと髪はついてる。生徒の大半はあれをズラだと睨んでいるが)


 この禿山、理事会長とグルになって悪事を始める。理事会長に資金を横流しするのだ。実はこの理事会長、学校に寄付したいなんてつゆほども思っていないらしく、ただのビジネスでやっていた。その流れはこうだ。


 理事会で多額の寄付金を集める。自らが一番多い寄付金を出すことで、自らに向く不信の目を掻い潜り、裏では絶大な権力を持つようにする。

 次に学校を取り込む。グルのやつを一人忍び込ませてそいつに学校の資金運営を任せる。

 最後に、その資金の大半を横流しさせ自分が寄付金を受け取る。内通者にも一定数の金額は渡し、事情を知ってしまった教員も圧倒的金額の前に黙らせる。


 最悪な野郎どもだ。うちの学校を乗っ取った挙句に理事会を信頼して金を預けた保護者やOBから金を巻き上げる。


 これに私たちが気づいたのはある教員のおかげだった。木村という英語の教師だ。

 無論彼が自白してくれたわけではない。気弱で、生徒にすらビビってしまっている彼は上司に逆らう勇気なんて持ち合わせちゃいないのだ。

 事の発端は彼にかかってきたあるメールだ。


 授業中に彼が携帯で資料を画面共有しながら説明していると、ピコン、と小気味いい音がしてメールが届いた。画面上部に表示されたタブには、こう書いてある。

 件名、裏金について。差出人、@〇〇tyuugakkourizikai.com


 もう、怪しすぎる。


 まず「裏金」が怖い。しかも差出人が〇〇中学校理事会ってもうズバンと書いてあるんだ。理事会がお金周りでやばいことやってるなって僕たちは気づく。木村がどう取り繕ってもその事実は隠せない。

 というか、私は彼に一つ言いたい。


 プライベートの携帯と仕事の携帯分けろや。


 その後、放課後にした。直接的にはなんも怖いことはやってないよ。ただこわ〜いお兄さん三人組で問いただしたけど。

 やっぱりヤンキー中学校だって?いや、俺たちは正義の前に正しい行いをしてるだけだからな?マジで。


 そうして俺たちは理事会長の陰謀を知ることになる。普通は警察に行くんだろう。だけれど僕たちは自らの手で反抗することを望んだ。

 どうしようもないほど自由を渇望していたから。


 やっぱりヤンキー?

 なんか偽るのもめんどくさいなぁ。まぁ確かにそうかもしれないという発言にとどめておこう。

 だけれど俺たちが、自由を求めていたのは本当だ。


 他人に頼って得られるものは自由なんかじゃない。

 そんなヤンキーに許されたちっぽけなプライドだけで大人に挑む。

 

 これはそんな俺たちの戦いの物語。

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