僻地で暇するガーディアン

麝香連理

第1話

 ここはライオ大陸。数ある大陸の中でも最も大きく、最もバトラーの活躍が注目される大陸。

 大陸にはガーディアンと呼ばれる人物が複数いる。  ネイバーを四体引き連れ、その中から二体を選んでお互い勝負。その総数の75%から勝利を勝ち取り、許可をもらった者のみがチャンピオンに挑戦できる年一開催のリーグトーナメントが行われる。

 最大数はもちろんこのライオ大陸で、ガーディアンは二十名いる。

 

 なにを隠そう今ソファで寝っ転がりながらよく分からん説明をしている俺もその一人である。


 ネイバーそれぞれの共通点がまちまちであり、そのため複数のグループ分けがなされている。ガーディアンはそのグループの中から一つを選び、ガーディアンとして活動する場合はその指定したグループしか使えないことになっている。

 火、水、風等、そのネイバーの得意とする属性。

 獣、人型、無機物等、見た目の分類。

 生息地等の住む環境。

 概ね、この三つがグループの基本である。

 そして、俺は雪山に生息するネイバーを使うガーディアンだ。最初の相棒が雪山出身ってのもあるが、俺が配属された地域が豪雪地帯であるからだ。


 言っておくが、初めからこんなグータラだったわけじゃない。人が来ないのが悪い。

 昔はガーディアン全員からの認可が必要だったらしいが、先々代ぐらいで75%に変わったらしい。

 もちろん、俺が嫌われてるわけじゃない。

 チャンピオンが変わるとガーディアン全体で勝負をして、負けたら一人がガーディアン剥奪、その他の新チャンピオン以外の元ガーディアンと元チャンピオンがくじ引きで配属される地域を決めるのだ。


 そしてここ五年、一度もチャンピオンが負けないせいで、挑戦者や配置替えの機会のない俺はやる気を失くした。


 基本的に日課は俺のネイバーとじゃれあい、バトルの研鑽を積む。一応ガーディアンとしての仕事は全うしないと、協会から金を貰ってる身として申し訳なさが勝つ。

 正直このプリータウンのガーディアンパレス(俺が今いる小屋の隣にあるばかでかい建物)は撤去していい気がする。だって地元民ですら来ないんだもん。

 せめてプリータウンの近くに建てようよ。だってここライオ大陸最北端にあるプリータウンよりさらに北にあるフカ山の中腹にあるんだよ?

 命知らずの登山家が宿として使ってることしか見たことないんだよ!?俺宿屋の店主と間違われたしな!

 おかしいだろォ!


 フゥ、落ち着こう。

 ネイバーは基本外にいるが、移動の際のあれこれなどでネイバーをアシストクリスタル(使い捨て)と呼ばれる丸いガラスに閉じ込めることが出来る。

 理屈は分からないが、ネイバーにクリスタルを渡して入ってくれと頼むと、クリスタルに触れたネイバーが吸収されるように吸い込まれる。

 出す時は、名前を呼びながらクリスタルを割ることで煙と共にネイバーがそこに現れる。

 値段によって多少変わるが、ネイバー的にはその中の居心地は良いらしい。しかし、粗悪品を使用した時は煙でネイバーが噎せているのを見たことがある。

 クリスタル関連だが、少し前からネイバーを閉じ込めるべきではないと騒ぐ団体が出てきたらしい。

 俺の場合あまり使うことがないため、ガーディアンとしてのスタメンである四体分しか持ちあわせていない。基本ここは広いし、ガーディアンになる前に旅をしていた仲間は実家でのんびりしていることだろう。


 配属当初はガーディアンパレスに日中はいたのだが、それもだるくなってこの小屋で挑戦者が来るか待つ。

 来た場合ベルが鳴り、俺が改造したパレスの迷路を進ませる。ちなみに勝負となんの関係もない。そして、監視カメラでそろそろ来ると確認したら裏口から入って待ち構える。

………まぁ、ベルが鳴ったことはないんですけど。



コンコンコン

 とまぁ、感慨に耽っていると小屋のドアが叩かれた。

「また登山家かぁ?はいはぁい。」

 俺は気だるげにドアを開ける。

「あ、すみません。ちょっとお聞きしたいのですが。」

「……あぁ、まずは入りな。寒いだろう。」

 ビックリした。むさ苦しいおじさんかと思っていたら、十代くらいの少年だった。

「あ、ありがとうございます。」

「それで?なにを聞きたいんだい?」

「あの、ここにガーディアンパレスがあるって聞いたんですが………?」

 なん……だと!?

「あ、あぁ……あそこのデカイ建物がそうだよ。」

「あれは入っても良いんでしょうか?」

 まぁ確かに人気がないから初見は怖いよなぁ。

「大丈夫だよ。中に入れば案内されると思うから。

 ……あ、ここでアイテムを買えるけど?」

 登山家が来たとき用に販売しようと思って買っておいたアイテムがあって良かった。

「本当ですか!?じゃあ…………ホットスプレーと傷薬を。」

 傷薬は文字通り矢面にたって戦うネイバー用。

 ホットスプレーは噴射するとその周囲が温かくなるという優れものだ。

「はい、毎度。君はチャンピオンになりたいのかい?」

「はい!」

「そうか。でも、なんでわざわざここに?」

「俺、ここをクリアしたら全てのガーディアンに認められることになるんです!だから、チャンピオンを目指すならガーディアン全員に勝たないと!」

 な……なんて良い子なんだぁ!

 この心構えに称賛を送りたい。

「へぇ?じゃあ19個のネイバーストラップ持ってるの?」

 ガーディアンに認められた証として、そのガーディアンのエースを象ったストラップが渡される。日付やガーディアンとバトラーの名前など、裏側に結構細かく刻印される。

「はい!これです!」

 少年はそう言って、懐のケースを開ける。

「おぉ、本当だこりゃすごい。最後の一人、頑張りなよー。」

「ありがとうございます!精一杯頑張ります!」

 少年はそう言って小屋を出た。

 そして、ほどなくして挑戦者を知らせるベルが鳴った。



 ………楽しくなってきたなぁ!

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