第2話 「あたしはいつも一杯だけ」

正直言って私は初めてその時レミー・マルタンを飲んだのです。ですから、少々冒険でした。

ママが、

「ロック? ストレート?」

と訊いてきましたが、どちらにしたらいいかわからなかった。

それで、左隣に座っている摩耶が、ストレートで飲んでいるから、真似をして、

「ストレートで」

と答えました。

レミーを口に運びましたが、あれはいい匂いですね。口にふくむと、まろやかでコクがあって、深い甘みがあって、こんなに美味いものが世の中にあったのか、と驚きました。

「どう?」

と、摩耶が私に訊きました。

その時が、これもまた摩耶と話をした初めてのことでした。

「美味いものですね」

「そうでしょ? 口当たりがいいから、飲み過ぎないようにしないとね」


ママが私の前にグラスにトールグラス(背の高いグラス)に入ったミネラルウォーターを置きました。チェイサーです。

私はチェイサーをグラスの半分も飲みました。

「あたしはいつも一杯だけ。味わうって感じかな」

と、摩耶が言うと、

「そうね、摩耶さんは、いつも一杯だけよね」

と、ママが摩耶に言いました。

なんとなく、その言葉使いが、摩耶をいたわっているような感じがありました。


それから私は摩耶とあれこれと話をしました。思いのほか、摩耶は気さくな人柄でした。

摩耶は昼間はエキナカの雑貨店に勤めていること。もう勤めはやめたいこと。アパートでひとり暮らしをしていること。私生活ではいつも一人で過ごしていること。本を読むのが好きなこと。

そんなことを摩耶は話してくれました。

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午前2時の美女 花影ゆら @yurahanakage

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