2024.12.25. 23:30

 私は子供部屋を出て、1人ため息を吐く。

 昼間は近所を駆け回って政哉を知らないか聞き回ったが、何も収穫が無い。

 警察にも言ったが、「そういうお年頃なんですよ」の一言で帰されてしまった。

 おそらく、たった1日の失踪では相手にしてくれないのだろう。

 

「政哉……どこにいるの……?」


 今日は政哉がいないため1人で子どもたちの世話をしたが、かなりハードだった。

 私が料理をしている間、掃除をしている間、お風呂に入っている間―――政哉はいつも、子どもたちの相手をしてくれていた。

 長男の協力のありがたみをよく感じた。


 しかし、警察が協力してくれないとなると、自力で探し出すしか無い。

 政哉が消えたのが何時頃かもわからない状況で、近所の人の情報提供も無いとなると、一体どうすれば良いのか。

 しらみ潰しに色んな場所を周る? そんな事をして、簡単に見つかるだろうか。

 そもそも、何故政哉が失踪したのかもわからない。

 1人で黙々と考えていると、カーディガンのポケットのスマホが振動した。

 画面には「きょーじゅ」からの電話着信が表示されていた。


「もしもし?」

「もしもし、あたしだよあたし!」


 きょーじゅの高い声がキンキンうるさい。


「きょーじゅ、今何時だと思ってるの」

「んー、11時?」

「そう。いい子はもう寝る時間なの、わかる?」

「あたしいい子じゃないも〜ん!」


 きょーじゅが楽しそうに答えてくるので、もうツッコむのはやめた。

 きょーじゅは私の高校時代からの友人で、今は1人で探偵事務所を開いている。


「ところできょーじゅ、今日はどうしたの?」

「ん〜とね、なんか困ってそうだな〜って思って!」


 きょーじゅは機械音痴で、めったに私にメールや電話を掛けてこないため、なぜ急に今日電話が来たのか知りたかった。


「困ってそう? 私が?」

「そそ。なんか悩んでるでしょ〜? この私に任せなさい!」


 きょーじゅがあまりにも自信満々に言うので、私は政哉の一件を相談してみることにした。


「実は……今、長男が失踪してるんだよね」

「……えっ?」


 きょーじゅの目が点になっている画が想像できる。


「失踪? えっ、いつから?」

「昨日の夜はいたはずなんだけど……朝起きたらいなくって。近所の人も誰も見てないって言うから、もうしらみ潰しに探そうって思ってたんだけどね」

「……よ」

「え? なんて?」


 私の言葉に驚いたきょーじゅが、蚊の鳴く声で何かを呟いたが、なにも聞き取れなかった。


「だ〜か〜ら〜っ! その件、甘く見ないほうが良いよ。きっと何かが絡んでる。特に失踪モノはね」


 きょーじゅの声がだいぶ低くなってきた。

 テンションが下がってきている証拠だ。


「そ、そうなんだ……。それじゃあ、もし空いてたら明日、詳しく話そうよ。電話越しだと聞き取りにくいし」

「そうだね! じゃ、また明日〜!」


 今日も相変わらずラメラメがきらめいている。

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白の嘘 カボチャ @flee

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