第一章 唐突な出会い
二代目ブラックナイト
第一章 唐突な出会い
《イブハール歴2038年》
「おい、ここら辺に、食料の補給できる村はないのか」という声がした。がやがやと声がする。それに、草を雑多に踏む音も。
山賊の一団だった。パーティーは15名だ。手練れの魔法使いも1名いる。
「お頭、地図にはありませんが、ヘラルドのやろうが、この先に集落がある、地の精霊がそう教えてくれた、と申してます」と、子分の一人が、山賊のリーダーに告げた。ヘラルドというのが、魔法使いの名だ。
「でかしたぞ、ヘラルド!!それに、お前もな!よし、そんなに大きな集落じゃないなら、食べ物をこっそり盗んじまおう!!ヘラルドもいるし、いざとなれば脅せばなんどかなるだろう」
そのあたりは、「みどりが丘」と呼ばれる、なだらかな丘陵地が広がる豊かな土地だった。川も流れている。街道からは外れているが、メルバーンの田舎にしてはいい土地だ。
時刻は黄昏時・・・夕刻だった。その山賊のやりとりを、こっそり盗み聞きしている一人の少女がいた。
名をハザリーと言った。
「出番よ、鳳炎の剣よ・・・・!!」と、ハザリーが、小屋の奥の部屋に安置している、一本のなかなか大きい剣にそっと触れる。
「すみれ姫、どうなさった??」と、その日、ハザリーの小屋に相談事に来ていた老人が尋ねた。
「ブロニフラス町長、この町にまた悪者が。山賊か何かでしょう、私が追い払ってきます」と、19歳のハザリーが立ち上がった。フラウ師匠・・・ハザリーの親代わりで、魔法や剣術を教えてくれた賢者・・・は、ハザリーが16歳の時、シェムハザという悪神を討伐するためこの町を去り、以来、帰ってこない。音沙汰もない。
「また、その剣で?」と、町長が言う。
ハザリーが取り出した剣・・・鳳炎の剣・・・鳳炎剣は、神々が人間に与えた、正義を貫くための伝説の剣と言われている。刀身には常に鳳凰の炎が宿るという。
「この剣があれば、私の剣術でも・・・!!」と、ハザリー。師匠から習った結界魔法で、敵が侵入してきたことは察知できた。あとは、この町で唯一魔法が使える、ハザリーの役目だ。
「お気をつけてな、すみれ姫。すまんな、フラウ賢者がいなくなってからというもの・・・・」と、町長が沈んだ顔をする。
「ブロニフラス町長、そんな顔しないで!いつものように済ませてきますから」と言って、ハザリーは剣をつかみ、外に出て行った。
すみれ姫ことハザリーが、村を襲う輩を退治しに行くのは、3年間でこれで4回目だった。
ハザリーは、自らの気配を消し、(そういう魔法があった)、そっと山賊のいると思われる地点の近くへ潜んだ。
遠くから見てみると、確かに、いた!山賊20名近くが、村からそう遠くない森の中で、たいまつの灯りを手に、きょろきょろと辺りを見回している。今は夕刻を過ぎ、すでに日は落ちた。
「お頭、住民が寝静まったころを狙いますか?あの町に魔法使いがいたら厄介ですぜ!」と、子分の一人が頭に言った。
「そうだな・・・おい、誰か川の水をくんでこい!!それまで、水で耐え忍ぼう」と、頭のヴォルフが静かに言う。
(誰かこっちに来たわ・・・!!)と、川の方に、革袋を持ってきた山賊2名を見て、ハザリーは思った。思わず、剣をぎゅっと握りしめる。
フラウ師匠からは、「君の剣術はまあまあだね。筋は悪くないが、君は魔法の方が向いてる」とたびたび言われていた。だが、魔法のすべてを教えてもらう前に、師匠は殉職された。
ハザリーは、川の水をくんだ二人の後をこっそり追うことにした。
あの身なりからして、山賊なのは一目瞭然、そして、見たところ、住民が寝静まったころを狙うのだろう、と簡単に予測できた。
同刻、みどりが丘の入り口にて。二人の若者・・・青年が、旅人の服装をして、みどりが丘を歩いていた。
先ほど、みどりが丘を越えた先にある、小さな村・ダーラムの町の酒場から出てきたところだった。つまり、山賊のルートとは真逆になる。
「うまいビールだったな、ニール!」と、その二人の若者の一人が言う。少々酔っているようだ。
「カレル、アンタはちょっと飲みすぎだったぞ。ほら、さっさと行くぞ」と、ニールと呼ばれた青年が言う。
こうして、カレルとニールの二人組は、ダーラムの町とみどりが丘をあとにするところだった。
そのはずだった。だが、突如、二人の背後から、キーン、キン!!と、剣の打ち合う音が響いてきた。
「!?!なんだ!?」と、カレル。
「ここら辺でなんで剣の音がするんだ??」と、カレルが、自分の剣を触って言う。
「俺らも行くべきか!?どう思う、ニール賢者??」
「もしかして・・・住民が言っていたじゃないか、『すみれ姫』という少女が、このダーラムの町はずれに一人暮らしており、町を守ってるって。その子と関係があるんじゃないか??」と、ニール。
「女の子なら、助けてやってもいいな!よし、行こう!!」と、カレルがくるりと進路を逆に進む。
「あ、おい、待てよ」と、ニール。
その頃。一人乗り込んだハザリーは、奇襲をかけ、山賊の野営地に乗り込んだ。
「やい、やい!!私が、このみどりが丘の守護者・ハザリー・ヴァイオレットよ!!この剣が怖いなら、今すぐこの地から立ち去りなさい!!」と、ハザリーが叫ぶ。
「あぁ!?!なんだぁ?!?」と、お頭のヴォルフ。
「ハザリーって・・・。もしかして、前の村で話題になってた、『すみれ姫』のことか??名前と一緒で、そのままだな」と、山賊の一人が言って、ニヤリと笑い、剣を持って立ち上がる。
「お嬢ちゃん!かわいい子がこんな山賊の集まりに一人で来るなんて、勇気があるねぇ、それだけは認めてやる!だがな、もう君はおうちに帰れないぜ??」と、その山賊が、ハザリーに近付く。
ハザリーが、
「この剣が眼に入らないのか!」と言って、剣を一振りする。
「いでよ、鳳炎の剣(つるぎ)!!」と言って、剣を何度かふったところ、鳥のいななく音がし、ハザリーの背後から、鳳凰のような姿の炎が現れた。鳥ではない、その形をしているが、炎だ。
あたりが熱風に包まれる。山賊たちが、食べていた食料の残りをこぼして、熱すぎるその地から立ち去る。
「あちちちち・・・・っ!!やけどしちまう!!なんだあの剣!!?!?」と、山賊の一人。
「今すぐこの地から立ち去れ!でないと、命を落とすことになるわよ!!」と、ハザリー。
「そこまでです」と、透明化の呪文を解き、ハザリーの背後から、一人の男が、ハザリーの首すじに剣を突きつける。魔法使いのヘラルドだ。
「お前は・・・山賊の仲間か」と、ハザリー。
「これでも一応プロの魔法使いでしてね。命が危ないのはそちらでは??」と、ヘラルド。
「私だって魔法使いよ!!」と言って、ハザリーが剣をふり、その敵の魔法使いの胴を真っ二つに斬ろうとする。
ヘラルドがそれを優雅にバックステップでかわす。ヘラルドはまた透明化の呪文を使った。ハザリーが舌打ちする。
「アーネト・ヘラーク・テフネト!我が水の精霊よ、我の指名に答えよ!!水天!!あの鳳凰の炎とやらを、消してしまえ!!」と、ヘラルドが叫ぶ。
「ふん、鳳炎剣には、魔法は効かないのよ!!いかに水の精霊の上級の力であろうと、この炎は消せやしないわ・・・!!」と、ハザリーが言ったとき、ヘラルドの一瞬の合図で、脇の茂みに隠れていた男が、小刀をハザリーに投げつけた。
「!?!?」ハザリーの左肩に、小型が深く突き刺さる。「うっ!」と言って、ハザリーが思わず鳳炎剣を地に落とした。とたんに、鳳凰の形を模した炎が消えていく。
「フフフ・・・あとはこの水天の水のカッターで、その首をはねてあげましょう・・・」と、ヘラルドがニヤリと笑う。
「女の子一人に男十数名かよ??かっこわりーな、オイ」という声がした。
ハザリーが左腕をかばいつつ、はっとして顔をあげる。藍色と黒の装束をした若者・・・まだ30にもいってないだろう・・・が、なかなかに大きな刀を持ち、その場に現れた。
「な、なんだキサマは!!」と、ヘラルドが慌てる。
「ポンコツ魔術師、お前は黙ってろ!」と、ニール賢者が言って、魔法詠唱なしで、シャイン・ソードでヘラルドに側面から斬りかかった。ヘラルドはそちらに応戦せざるを得なくなった。
「オイアンタ、大丈夫か??」と、カレルがハザリーの目を見る。
なかなかの美形だった。美形というより、どこか意志の深さを感じさせる目だった。ハザリーは恥ずかしくなって目をそらした。
「くそ、貴様ぁ~~~~!!」と、ハザリーたちを取り囲む残りの山賊15名ほどが、一斉に姿を現し、ヘラルドとニールの斬り合いは置いといて、一斉にカレルを狙う。
矢を構える敵もいたが、カレルは恐れず、一人一人的確に倒していった。その華麗な剣裁きは、まさに芸術と呼べるほどのものだ、と、一緒に戦うニールセンも思ったものであった。
飛んできた矢も、カレルが剣ではじく。ハザリーは、足手まといにならないように、カレルの傍を離れずにいた。
「俺の傍を離れるな」と、カレルがそっとハザリーを鋭い目で見て言った。
ハザリーがこくん、と頷く。
ものの見事2~3分もかからず、カレルは山賊15名前後を全員みねうちで倒してしまった。
「そっちもやったか」と、カレルがニールセンに尋ねる。
「おうよ」と、ニールセンが剣を高くつきあげて答える。
「おっと、お嬢ちゃんの傷の手当だったな!俺はカレル。魔法剣士やってる。23だ、よろしく」と、カレルが、小刀が刺さったままのハザリーの右手を取って、立たせる。
「よろしく・・・あなたのさっきの剣裁き・・・あなたは、ブラックナイト??お師匠様にも引けをとらなかったわ」と、ハザリー。
「お師匠様??ブラックナイト???なんじゃそりゃ」と、カレルが笑う。
「あ、鳳炎の剣が・・・・」と、ハザリーが、小刀を自分で引き抜き、捨てて、呻きながら、どこかの地面に落としてしまった鳳炎剣を探す。
「オイオイ、嬢ちゃん、それより傷の手当しないと、死ぬぞ!」と、カレル。
「俺がやります」と、ニール。
ニールセン賢者が、バッグから包帯を取り出し、ハザリーを木のきりかぶに座らせ、きつく巻く。止血もした。
「応急処置はしました。あとは、ダーラムの町の医者に見せましょう、カレル」と、ニールセン。
「そうだな、っておい、動くなって!!」と、カレルが立ち上がろうとしたハザリーの右手をつかむ。
「・・・ないの」と、ハザリーが言った。
「あ??」
「私の、受け継いだ大切な、鳳炎剣がないの」と、ハザリーが言って、真っ青になる。左腕からの出血で、顔色が悪かったのが、さらに悪くなる。
「鳳炎剣??そういやあ、アンタ剣を構えていたような・・・??っておい!!」と、カレル。ハザリーが気絶してしまったのだ。
「おい、ニールセン!!まずいぞ、この子意識失っちまった」と、カレル。
「その子をおぶって、ダーラムの町まで戻ろう、カレル。それはそうと、この子の言ってた”鳳炎剣“って、まさかあの伝説の古い剣か・・・??」と、賢者で物知りのニールが不思議がる。
「そういえば、ここに来るとき、上空に鳥のようなものが見えたよな・・・・??」
「さっさと町に戻るぞ!!」と、カレルが言った。
こうして、カレル一行と、運命の少女・すみれ姫ことハザリーの出会いが始まった。
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