ifs1.5 [あの鈴音届くは淡く焦ぐ] 《前編》
お金も無く話題も合わないため
友達も居ない僕は近所を散歩していた
風鈴鳴るある暑い夏の日、とある駄菓子屋の
前を通りかかった時…店の中から同級生の声が聞こえた
チリン チリン♪
少年達「婆ちゃん!くじ引きやらして!」
お婆ちゃん「今日も元気だねぇ、はいよ、引いておいき」
ガサゴソガザ(くじを選ぶ音)
少年A「俺これに決めた!」
少年B「じゃあ僕はこれ!」
少年C「なら僕はこれ〜」
3人の少年はそれぞれ1つくじを引いた
少年A「じゃあいっせいのであけるぞ!」
少年C「え、もう開けちゃった…」
少年A「なら俺も開けよ〜」
少年B「結局みんなバラバラじゃん…」
少年A「!、ん〜…今回は微妙かな〜…
お前何等だった?」
少年C「僕はハズレで34等だったよ…」
少年A「ちぇー、俺なんか41等だぜ〜」
お婆ちゃん「はいはい、引いたら景品と交換するよ〜」
少年A C「はーい…」
少年B「な!この文字の大きさは!?」
その声に少年達は慌てて駆け寄る
少年A「何等引いたんだよ!!」
少年Bはドキドキでくじをめくった
少年B「3等だぁ!!!」
少年A C「えぇぇぇぇ!!!スゲェ!!」
お婆ちゃん「当たりだね、景品と交換だよ」
少年A「スゲェ!3等って今話題で最新の大会とかでプロも使ってるヨーヨーじゃん!」
僕はその楽しげなやり取りが羨ましくなり
家に帰るとダメ元で母さんにくじ引きを
したいとお願いした
母は申し訳なさそうな表情をする
母「ゆう ごめんね今は少しでも節約しないと
学校の給食費だけでもいっぱいいっぱいなの」
母の悲しく申し訳なさそうな表情を見た
僕は小学生にして母親の必死な努力と本来は
もっと与えてやりたいという愛とも言える苦悩を察した
ゆう(くじ引きとか言ってる場合じゃないよね…)
ゆう「ねえ、母さんご飯作るの手伝うよ!」
母もその言葉で何か察したのか少し目を
潤目にして言った
母「そうね、その前に洗濯物取り込んで来てくれる?」
僕はさっさっと洗濯物を取り入れると、
洗濯物を畳んだ後、ご飯作りを手伝った
数日経ったある日いつも通り散歩を
していると、電柱の下に何か光るものが
落ちていた
何か気になって近付いて見てみると
そこには100円玉が落ちていた
ゆう「100円だ!………」
その時僕の頭にあの楽しそうな
やり取りが蘇った…
ゆう「くじ引き……」
そして気が付くと僕は無意識に駄菓子屋の
前まで来ていた
ゆう(落ちてたお金だし、大丈夫…だよね…)
僕はそのまま駄菓子屋に入った
お婆ちゃん「いらっしゃ〜い、何にするかい?」
ゆう「くじ引……」
その時頭の中に母さんの言葉がよぎった
《節約しないとだから…》
くじ引きを指さそうとしていた僕の手が止まる
ゆう(母さんは楽しみ1つも無く僕の為に働いてくれてるのに、楽しみに使っていいのかな…)
お婆ちゃん「ん、くじ引きかい?ほれ引いてみ」
ゆう「あ…はい……」
僕はなんとなくの流れで引いてしまった
ゆう「46…等…」
お婆ちゃん「はい、これだね」
そう言うとお婆ちゃん2つの鈴の付いた
キーホルダーと交換してくれた
僕はその鈴を眺めながら歩いて帰った
帰った僕は母さんにその事を話した
すると母さんは突然笑いだした
母「あははっ、ゆう そんな事考えてたの?あのね、いつもは無理ばかりさせちゃって
るけど、楽しめるチャンスが来たなら全力で
楽しんじゃっていいのよ?」
ゆう「……」
母「でもね、もしもっと考えて使えばよかったとか後悔があるなら、その鈴を自分の弱点だと思って大切に持っときなさい、いつかきっとその鈴が知らせてくれるわ…踏み出す大切な時をね」
そして7年後……
母さんはガンによって2年前の春に他界した
それからは母の親戚の叔母さんが僕を
引き取って面倒見てくれている
そして僕は高校2年生になり、もうすぐで
高校3年生になるまで成長していた
ダッタッタッタ(階段を降りる音)
叔母さん「悠ちゃん、お母さんに行ってきますは言ったかい?」
悠「今言うところ~」
母さんに声が届くように元気よく
日課の挨拶をする
悠(母さん僕、好きな子が出来ました!告白しようと思ってます、後押しして下さい…)
悠「よし!じゃあ母さん、行ってきます!」
シャン(鈴の音)
悠「叔母さんも、行ってきまーす♪」
叔母さん「気を付けてね〜」
そして僕は到着する、
「あ!ゆう君おはよ♪」
悠「なぎちゃんおはよ♪」
そう、この凪ちゃんこそ
僕が思いを寄せる女の子!
出会いは中学生の時、お金が無くお昼ご飯が
おにぎり1個で教室の窓際でコソコソ食べてた時に一緒に食べようと声をかけてくれたのが
初めで、それからは僕に分ける用に少し多めに弁当を持ってきたりと世話焼きで温かい人
そして僕はこの冬ついに凪ちゃんに告白する
放課後…
教室で…
凪「ごめん、無理なの…」
ぽろっぽろっ…(涙がこぼれる)
悠「……やっぱ……やっぱ僕なんかより
他に好きな人いるよね…」
凪「ゆう君だよ…」
僕はショックも大きかったからか
その言葉の意味が分からず混乱していた
悠「どういう…」
凪「私が好きなのは他でもなくゆう君…なの」
悠「じゃあ、なんで…」
凪「離れ…」
すると彼女はしゃがみこんだ
僕はとりあえず涙を吹くティッシュ凪ちゃんのそばに持っていくと凪ちゃんは理由をゆっくり
と話してくれた
内容は要するに親の仕事の事情で転校する
という内容だった
悠「転校か…それいつなの?」
凪「あと1週間後……」
悠「1週間!?あ、ごめん…」
凪「言い出すのが怖くて…離れたくなくて…」
僕は彼女のために何が出来るか必死に考えた
しかし…
親の仕事の関係上という建前の為、
離れるのは僕にはどうする事も出来なかった
悠(じゃあせめても…)
悠「ねぇ、今日から1週間放課後時間ある?」
凪ちゃんは?を顔に浮かべた
凪「あると思うよ、多分…」
悠「じゃあさ、明日から毎日放課後は
思い出作りでお出かけしようよ!」
凪ちゃんは何だか悲しいようでそれでも
ホッとしているような表情をした
凪「やっぱりゆう君なんだね///…」
僕がそれを聞いてポカーンとしていると
コツンッ(デコピンの音)
悠「イテッ…え?」
そうして凪ちゃんはスっと立ち上がった
凪「ほら、一緒に帰ろ♪」
悠「う、うん!」
それは11月の寒い日でもう辺りは暗く、
夜空には星が綺麗に輝いている帰り道だった
凪「今日の星、綺麗だね~ 」
クシュン(くしゃみの音)
悠「なぎちゃん寒いんでしょ、変えに持ってきてたジャージ使ってないからこれ使って♪」
そう言って凪ちゃんに被せた
凪「ありがとう………あの、手も寒いかも…」
悠「ん?………」
シャン(鈴の音)
悠(ん!…もしかして………告白したしもう
勢いで言っちゃお!)
悠「凪ちゃん……手繋いでもいい?」
すると凪ちゃんは嬉しそうな顔をして言った
凪「ありがと…///」
そうして僕は凪ちゃんを家まで送りとどけた
凪「またね♪」
彼女はそう言いながら僕が見えなくなるまで
外で手を振り続けた
僕は何度も振り返りながら
その場を離れていった
悠「なんか今日暑いな……」
[後編に続く…→]
ifs「 」短編story集 空猫 海徒 @nennekosensei
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