雪女かと思ったら雪男の娘だった

仁志隆生

雪女かと思ったら雪男の娘だった

 雪の降る夜の事だった。

 家に帰ると雪女がいた。


 ……頭おかしいのかと言われてもしょうがないが、事実なのだからしょうがない。


 だって部屋の中が凍り付いてるし、白い着物姿だし。


「あの、あの時はありがとうございました」

 雪女が深々と頭を下げて礼を言うが、何の事だかさっぱりだ。


「えっと、覚えてませんか? 昔迷子になってたわたしを助けてくれたでしょ」

「え? ……ああ」

 十年前の今頃だったか、迷子の小さな女の子を見つけて一緒にお母さんを探してあげたなあ。


「けどあの時の君もお母さんも普通の恰好してたな」

「そりゃ町中でこんな格好でいたら変に思われるし」

「そうかも。ところでお礼言いに来たなら部屋凍らせないでよ」

「あ、すみません。すぐ戻します」

 雪女が手をかざすと、部屋は最初から凍ってなかったかのように戻った。


「てか戻せるんだ。雪女って」

「わたし雪女じゃないです、雪男の娘です」

「え、どこが違うの?」


「どこがって、雪女は女性で雪男の娘は男の娘ですよ」

 雪女が笑みを浮かべて言った。

「……そういう事かああ!」

 この子男だったのか!


「分かっていただけたようですね。じゃあ」

 そう言って彼は着物を脱ぎだ、

「おい、何する気だ?」

「何って子作り」

「おのれは男だろが!」

「雪の精だからできますよ。さあさあ」

 彼はいつの間にか全裸になっていた。

 ああ、俺のよりでけえ……。


「っていきなりそれはないだろ! まずは普通に付き合ってからで!」

「だからおしり確定付き合いしましょうよ」

「意味が違うわあ!」

「……でも、そうですよね。じゃあお付き合いしてください」

 彼が着物を着ながら言った。


「え? あ……」

 しまった、つい言葉の綾で。

「駄目ですか?」

 彼が目を潤ませて言った。

「えーと……」

 どうしよ、悪い子じゃないし可愛いし。

 いやこの子は……。


 ええい。

「あの、友達からでいい?」

「はい。よろしくお願いします」

 彼は一転して満面の笑顔となった。



 さて、今後どうなるかは……?

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