雪は止んでしまう
つばめいろ
出会い
はらはらり
雪の舞う公園。僕は一人でブランコを漕いでいる。全てが嫌になったんだ。大事にしてた彼女に振られて、周りからはバカにされて、信じられるものは何もない。
もう夜に近づいているからか、公園に人の姿はない。声のない、寂しい公園はまるで、僕の心のようだ。ブランコの錆びついた、キコキコした音だけが広がる。
「何してるの?」
突然、後ろから声が聞こえる。振り返ると、一人の少女が立っていた。僕と同年代の高校生に見える。コートにマフラーに手袋に耳当て。寒さ対策バッチリであったかそう。
「ちょっと物思いに耽けてただけ。そういう君はこんな時間に何してるの?」
言ってから後悔した。ああ、なんで初対面の人にタメ口使ってるんだよ。別れた彼女と姿が重なってついタメ口になってしまった。頭を少し抱えていると、君はくすっと笑って
「こんな寒い日に、そんな格好で一人でいたから気になって」
そう言われて自分の格好を確認する。思い立って家から出てきたから、部屋着のジャージ。寒そうと言われたから寒く感じてきた。
「君はすごく暖かそうだよね」
「うん。寒いの苦手だからね」
君はポケットからカイロを取り出して見せる。そして、僕の手のひらに乗せてきた。
「これあげる」
「いや、君のカイロだから受け取れないよ。だって寒いでしょ?」
君は大丈夫、と言ってポケットから何個もカイロを取り出して僕に見せた。
―――これが君との最初の出会いだった
雪は止んでしまう つばめいろ @shitizi-ensei
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