スキー教室か、撤退か。

神逢坂鞠帆(かみをさか・まりほ)

第1話

「スキー教室参加しないと、体育の成績つかないんだよ。紫織しおりちゃん」

 同級生の女子は簡単に言ってのけた。

「え、インフルエンザの人は? 出席停止でしょ」

「だから、後で休んだ人と先生とでまたスキー場行くんだよ」

 私は、口をパクパクさせた。

「地獄じゃん」

「地獄だね」

 お昼休みの空き教室。私は、布で包んだ弁当箱をじっと見る。

「私、スキーやったことない」

「えっ? もしかして、スケートの地域だった? あ……」

 海沿いはスケート教室。でも、そもそもスキーもスケートもない。

月岡学園つきおかがくえんでは、基本、雪遊びしかしない。体力おばけのみ、スキーやらスケートやらしに行く」

「ああ~……」

 二人は、声を重ねた。

「あっ、でもね。大丈夫。初心者コースがあるから。毎年、片手でおさまるくらいの人数のハズ」

「え、一学年二百人以上いて、五人くらい?」

 だって、小学校の体育で滑るしと言う。

「ほら、三浦雄一郎みうらゆういちろうさんなんて、子供の頃から八甲田で遊んでいてね。大きくなって、背中にパラシュート背負って富士山からスキーで滑り落ちたんだよ。そう、だから、紫織ちゃんもやればできるよ!」

「……。例が特殊すぎる……」

 私は、頭を抱えた。

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スキー教室か、撤退か。 神逢坂鞠帆(かみをさか・まりほ) @kamiwosakamariho

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