透き通った空

八無茶

第1話 透き通った空

空は遠くにある。

手に届かない処にある。

しかし空は私達に安らぎを与えてくれる。

悲しいときに見上げると、涙を止めてくれる。

嬉しい時に見上げると、大きく包んでくれる。

怒った時に見上げると、怒りが拡散していくのがわかる。

そして無気力になった時に見上げると、一緒に考えてくれる。


夕暮れ迫る今、空を見上げている人がいる。

彼女は、嬉しい時かな、悲しい時かな、怒っているのかな。

それとも何もしたくなくなってしまった時だろうか。


「何を考えているの? 先ほどから私の方をじっと見つめているけど」「・・・」

「そうか、話すのが辛い事なのかな?」「・・・」

「辛い話でも勇気を持って私に話してみると気が楽になるよ。相談に乗ってあげるよ」「・・・」

「信用していないな。たまには信用して心を開いたらどうかな。すっきりするよ」

「嬉しいこと?」「・・・」

「嬉しいことなら、自慢でも、他人との差別でも、いやな奴の悲劇でも、欲しいものを手に入れたことでも何でもOKだよ」「・・・」

「悲しいことなのかな?」「・・・」

「涙は見えないね。何か怒っているんだ」「・・・」

「そうだ、何か一言いってくれれば豊かな想像力でその答えを出すよ」


「ほっといてよ! 私のことなんか!」

「ありがとう。やっとしゃべってくれたね。これからあなたの心の中の答えの見つけ方を授けましょう」「・・・」



「明日、お日さまの下で、透き通った空を眺めてごらん。あなたの心の中に必ず答えが表れますよ」「・・・・・・・・・・・・・」

                    

                  完

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