第20話 1973年4.29国士館vs朝高、新宿決戦大抗争事件 その10
石野率いるサカン連合12名は、完全にチョーコー9名の前になすすべもない状態まで追い込まれていた。
(このままだとまずい・・・・・・)
石野は、両腕を顔の前に出してチョーコー勢の攻撃をガードしながら必死に打開策を考えていた。
既に石野の下半身や上半身と顔は、多くのチョーコー生の打撃を受けて打撲まみれ、顔も何か所も腫れあがっていた。
その時、ホームの品川方面からキムジュンキ達から逃げていたサカン達がしわがれ声を12名の石野達サカン連合に発しながら、こちらに向かって走ってきていた。
「た、たすけてくれ!」
4人で逃げていたサカン達は、既に1人はチョーコー生たちに捉えられ、3人になっていた。
捉えられた1人は、山手線車内で4人に袋叩きにされて倒れていた。
その3人を追う、キムジュンキとチョーコー生5人は、キムジュンキ以外鉄パイプや金属バット、木刀にどこで拾ってきたのか杖をそれぞれ持っていた。
(げ!?キムジュンキだ!草野たちは何やってるんだ!?)
石野は、こちらに向かってるチョーコー生5人の中に、キムジュンキを見つけ、五体満足でピンピンしているのに驚くと共に、士官大の最強3人衆はやられてしまったのかと、この劣勢の状況でさらに不安感が増した。
目の前には、自分たちを鬼気迫る勢いで攻撃を仕掛けてきているチョンども9名。
そして、石野から左側(品川方面)からは、三河島のキムが4人のチョンどもを連れて迫ってきている。
石野の体がワナワナ震え出した。
「ててて、転進だーあああああああ!!!」
石野は、顔を上空に向けて発狂したような雄たけびをあげた。
それに驚き、ほんの一瞬。周囲にいたサカン勢11名とそれを鶴翼の陣の様に取り囲んでいたチョーコー勢9名、さらに少し離れた場所で石野たちへ向かって走ってきたサカン勢3名とチョーコー勢5名全員が石野に注目した。
その石野に気を取られた隙。チョーコー勢の動きが止まったその一瞬を見計らったかのように、石野は山手線ホームを池袋方面へ猛ダッシュし始めた。
そして、走りながら国士館連合14名に呼びかける。
「お前ら、転進だ!走れ!」
「ちょっ、ま、まってくださいよ~!!!」
石野が転進という名の敗走を始めたのをみて、残りの国士館連合14名は、まるで泣き言を言うかのような声を石野に向けて言いながら、石野の後を追い、同様に敗走をはじめた。
石野達15名が山手線ホームを池袋方面に向かって逃げていくのを確認したチョーコー勢14名は、当然その後は全力で追いかけた。
「チョッパリども、まてやあああああ!!!」
チョーコーの怒声とサカン勢の悲鳴が山手線ホームを中心にこだまする。
ホーム上でまだ残っていた乗客たちは、こちらに向かってくるサカンとチョーコーたちに慌ててホームの端へ退避。
山手線ホーム上で、サカン連合15名とチョーコー14名、計29名による大人数鬼ごっこが開始された。
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