第19話 1973年4.29国士館vs朝高、新宿決戦大抗争事件 その9

チョーコー生10名対サカン連合9名の乱闘は、拮抗していたのは数分だけで、人数が少なく尚且つチョーコー生の鬼気迫る戦いぶりに、サカン連合は完全に押し負け始めていた。


(こっちは士官大3人もいるんだぞ・・・・・・)

(高校生のガキに押し負けるはずが・・・・・・)


サカン大の格闘技同好会でキックボクシングをやっている恩慈と諏訪は動揺した。


(拓大の応援団より強くねえか・・・・・・)


サカン大の大田もチョーコー勢のあまりの勢いの強さに、精神的に追い詰められていた。


立ち上がって、その乱闘の様子を見ていた石野は、劣勢な国士館勢に焦り、急いでその国士館側に加勢しに走り出した。

それを見た、石野を救出した国士館高校生二人組、小倉と稲垣も遅れまいと走り出す。

小倉はその際、足元にあった黒い傘を拾いチョーコー勢9名に突撃した。



サカン9名相手に、得意のボクシングで相手の攻撃を受けては突き、避けては突きを繰り返していたチョーコー三年・リーテツヒロは、目の前で殴り合っているサカン大二年・恩慈を完全に圧倒していた。

恩慈は、リーテツヒロのコンビネーションに対応できず防戦一方だった。

リーテツヒロはサカン大・恩慈を圧倒していたことで調子に乗っていた。

それが、恩慈の後方からリーテツヒロに向かって、傘で突き刺そうとしていた小倉に気づくのが一瞬遅れる要因になってしまった。


「ちょーせんじんしねやあああああ」


恩慈の右後ろから飛び出した小倉が、両手で持った傘を、リーテツヒロの顔面目掛けて突いてきた。

リーテツヒロは、突然恩慈の後ろから現れた小倉に驚きつつ、普段のボクシングで培った練習の成果か、小倉の傘による突きに対して自然に反応したダッキングで躱そうする。

だが、恩慈に集中していた為、ダッキングが一瞬遅れてしまった。


グサッ!


「テツヒロ!」


サカン高・鳥海と掴み合いをしていたカクコウジが叫ぶ。


小倉が突いた傘の先端が、ダッキングで避けようとしたリーテツヒロの右目を直撃した。

ボクシングの有望選手で、本人もプロボクサーを目指していたリーテツヒロは、この戦いで右目を負傷、失明する。

その右目が影響し、プロボクサーへの夢を断つことになる。

数年後、親友のチョーコー元サッカー部・パクマサミチと共に歌舞伎町で成り上がろうと奮闘する事になるのだが・・・・・・。

その話は又、梁石日(ヤンソギル)さんの本「夜の河を渡れ」でどうぞ。


話を戻す・・・・・・。


右目を抑えながら後方へ倒れたリーテツヒロ。

チョーコー9名は、リーテツヒロが右目をやられたことで完全にブチ切れ、ゾーンに突入した。

ゾーンに突入したチョーコー生たちの集中力と攻撃力はすさまじく、士官大3名を入れたサカン連合12名は完全にフルボッコ状態で防戦一方になっていた。

石野含めたサカン連合12名は、完全にチョーコーの猛威に怯え始めていたのだった・・・・・・。


夕方に始まった、この国士館vsチョーコー新宿決戦。

長かったこの戦いも、ついに終わりを迎えつつあった・・・・・・。

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