第10話 池袋での前哨戦と日本警察
夕方 池袋駅内
チョーコー生たちは、朝夕と日夜ハクを襲った集団のリーダーである国士館の上本を主な目的にしながらさかん探しに精を出していた。
警察がこの頃連日に渡るチョーコーとさかんの乱闘に警戒を強めていたのだが、チョーコー生にとっては関係ない。まずは、卑怯な手段で同胞を病院送りにした上本とそいつが所属するさかんを倒す事しか頭になかった。
神奈川チョーコー生たちも、毎日朝夕、横浜駅前で日課の日本人不良&さかん狩りを行っていた。
さかん探しの合間にも他の高校の不良と何度かいざこざがあったが、対日本人用に完全にシステム化された朝高生の組織攻撃能力の前に、ほとんどが逃亡、中には抵抗しようとする者もいたが、軍隊の様に統率の取れたチョーコー生の攻撃力の前に無残に散っていった。
一例をあげれば、チョーコー生が日本人と揉めると、笛を持った伝令班がチョーコーオリジナルの笛(ホイッスル)を鳴らし、近くにいるチョーコー生に音で知らせる。そして、もう1人の伝令班が近くの公衆電話まで走り、チョーコー生がたむろしている喫茶店などに連絡をいれる。
それを聞きつけたチョーコー生たちが助太刀にくる、という流れだ。
対集団戦でも、時と場合を見極めリーダーの指示の元、全員が同じ人間かと思うほど統率の取れた行動で攻撃と撤退を使い分ける。
余計な追い打ちは、相手を死なせたり、警察に捕まるリスクが高まるからだ。
喧嘩慣れしているチョーコー生は、その辺の見極めに非常にたけていた。
喧嘩慣れしてない奴は、過剰な攻撃を加えて相手を死なせたりする。
その辺りの駆け引きが、チョーコー生は異常に強かった。
鉄の結束力を誇るチョーコーならではのシステムである。
そんなサカン探しの中、チョーコー生5人組が池袋駅構内でサカン5人組と衝突した。
数十メートル離れた場所から、サカン5人組を発見したチョーコー生たちは
「おらああああ!」
と気合が入った叫び声をあげながらサカン5人組へ突撃した。
その時、チョーコー生の1人がサカン5人組の中に上本を発見する。
「あいつ上本だ!」
俄然チョーコー生たちに気合が入る。
気合の掛け声はさらに勢いを増した。
サカンたちは、一瞬チョーコー生たちの気合に圧され後手に回ったが、そこは族やヤクザ相手に喧嘩強さを磨いてきたごんたくれ達、すぐに気持ちを切り替え、気合の入った声をあげながらチョーコー生へ同じく突撃していった。
少し離れた場所で警察官10数名ほどがその喧嘩を眺めていた。
チョーコー生とさかん坊が衝突した。
多人数戦ではいかに早く目の前の敵を倒して、仲間に加勢し数的有利を作るかが勝敗の分かれ目だ。
サカン側には、明らかにサカン大生と思われる190cmの大男がいた。
両手にはバンテージを巻き、ボクシングをやっていると思わせる動きでチョーコー生に襲い掛かる。
(後に、プロボクシングライセンスを持つ国士館大生と判明)
だが、チョーコー生はその程度では動じない。
その男と殴りあっているのは、カクコウジという極真空手の茶帯にも関わらず十条周辺の日本人の不良たちから「喧嘩三段」と恐れられたチョーコー生である。
5対5の乱闘も、チョーコー生が次第に押していった。
1人のさかん坊を倒したチョーコー生が隣でさかんと殴り合っているチョーコー生に加勢。
2対1でさかんを押す。
5対4になったサカンは、次第にチョーコー生に押され気味になる。
じりじり押されるサカン達。
その時、眺めているだけだった10数人の警察官が急に動き出し、サカン5人とチョーコー生5人を柔道技で取り押さえた。
喧嘩最強のチョーコー生も所詮は高校生。柔剣道で長年鍛えてきて体格に勝る日本警官には太刀打ちできず、見事に取り押さえられてしまった。
チョーコー生たちは取り押さえられながら悔しがった。
(あと、少しで上本を病院送りにできたのによ)
チョーコー生カクコウジは、取り押さえられながら上本に向かってこう叫んだ。
「今日は命拾いしたな!次は今回の様に逃げられねえからな、覚悟しとけ!」
日本と朝鮮の不良学生同士の喧嘩に遭遇した時の日本警察の動きは大体決まっている。
日本人の不良が押しているときは、静観しているだけだが、朝鮮側が押し始めると乱闘に介入して喧嘩両成敗で両方の不良を取り押さえる。
そして、都内の警察官の出身校は国士館出身が多いのだ。
日本警察そして国士館卒としては、日本人が朝鮮人に負けるのは看過できないのだろう。
だが、朝鮮人だけを取り押さえるのは日本警察そして国士館としての男のプライドが許さない。
なので両方取り押さえて一応の体裁をとるのだ。
だが、取り押さえるだけで連行まではされない。
両方説教されて終わるのだ。
これも昭和ならでは風景なのかもしれない。
結果的に、この乱闘が国士館vs朝高、新宿決戦の前哨戦となり、お互い相手への憎悪がより膨らむ形で4月29日を迎える事になった・・・・・・。
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