無才剣士の成り上がり 〜魔力がないので剣術極めて冒険者を目指します。〜

さい

プロローグ

 五大陸の一つグランハザニャ大陸、ワシルトン合衆国、ドライブシティは世界一の冒険者都市である。

 そこに位置するドライブ冒険者学校は世界で三番目の偏差値を誇る、世界屈指の冒険者学校だ。

 ドライブ冒険者学校は実力で上から順番でA〜Eと一年に一度、クラス分けされる。

 もちろん、A組になるほど、待遇が良く、Eに近づくほど、人としての尊厳が失われていく。

 まさに超実力主義学校である!!

 これは、そんな冒険者学校に通う一人の夢見る少年の物語──



 校庭にて、木の上で木刀を抱きしめながら眠る一人の黒髪少年の耳に入ったのは、


「おいおい、焼きそばパン買ってこいって言ったじゃねえかよおおお!! なんだこれ、焼きそばじゃなくて焼きサバ寿司じゃねえかよおおお!!」


 不良によるパシリへの怒鳴り声だった。


「すすす、すみません……!!」

「まだ焼きサバパンならイントネーションの違いでわかるよ? けどよ、焼きサバ寿司ってなんだよ、もう別物じゃねえかあああ!!」


 不良はパシリの腹部に向かって拳を入れた。


「う……っ」


 その場に倒れ、嘔吐するパシリ。


「うるせえ……」


 ボソリとそう呟き黒髪の少年は木から飛び降り、地面に着地する。


「おい、お前」


 そして、不良に向かって木刀の先を見せた。


「ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃうるせーんだよ、寝れやしねえじゃねえーかよ……」


 彼の言葉に不良は震えだした。


「そのクルクルパーマに木刀……そして、鼻の横傷……お前、ももも、もしかして……」

「あーそうだ。俺が無才剣士だ」


 ニヤリと白い歯を見せ、


「時間をくれてやる、三秒以外に消えろ。じゃねえと、お前をぶっ飛ばす!!」


 全身に鳥肌が立ち、青ざめていく不良は慌てて少年の前から走り去っていく。


「あ、あの、助けてくれてありがとうございます……!!」


 ポツンと残されたパシリが少年に向かって頭を下げた。


「お前、パシリにされてて悔しくないのか?」

「えっ?」

「冒険者を目指してんならよ、己の道は自分で決めろよ。じゃねえとよ……」


 少年はパシリの下腹部目掛けて、思いっきり木刀を突き刺した。


「お前は一生負け犬だあああ──ッ!!」


 顔色が真っ白になり、口から泡を吐きながら倒れるパシリ。


 ふん、と少年は鼻で笑い、


「てめえの命はてめえで守るもんなんだよ、このバカヤロー。守れねえならとっとと退学しろ!!」


 そう言い残すと少年はその場から去っていった。


 ふわああ、と伸びをしながらあくびをする少年は、


「やっべえな、思いっきりやりすぎた……もしかしたら、潰れちまってねえか? ま、まあ……自分の息子を守れねえ方が悪いし? い、いいよな……うん、いい!!」


 先ほどの行動に少し後悔するのであった。


 この少年の名は、アシュ=バルトロン。

 通常、五歳になると身体に魔力を蓄えることのできる魔貯器官が発達するのだが、発達せずに魔力の使えない少年。

 がしかし、彼は剣術を極めて、魔力が命である冒険者を目指す少年である!!


「まっ、今日も今日とて頑張りますか……ッ!!」

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無才剣士の成り上がり 〜魔力がないので剣術極めて冒険者を目指します。〜 さい @Sai31

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