嫌われの子

みゃんびゃん麺

第1話 革命前夜

『悪魔の子、聖火により浄化される』


そのような言葉が街中の至る所に貼り付けられ、それはまるで褒め称えられているかのようだった。


そんな薄気味悪い場所である「ノリファス王国」にとある人物がいた。


一人の男はそれらに気にも留めず真夜中の街を歩き進む。


足音が軽快な音を奏でるほどに静寂な時間帯でもそこはやっていた。


「いらっしゃい」


店主の親父は珍しがった。

本来この時間帯に客が来るのは珍しく、今の時期は旅団も来ないことから開けている意味は無いが一人で夜を越す寂しさから開けているというのに。


男はただ一言。

「美味いものをくれ」


店主は聞き返した。

「飲み物か?それとも食べ物か?うちは...」


彼は間髪入れず、

「両方だ。金ならある」


店長はそれを聞き、用意に取り掛かる。

目の前の男はフードを深く齧り、腰には剣を携えていることから「金持ちの傭兵か?」と脳裏に浮かび上がる。だが今は彼の口は開きそうに無い。そう。お酒がなければ。


店主は少し息を切らしながら

「これが俺の店1番の美味い酒だ。」


彼は出された酒を少し見た後、味わうことなく一気に喉元へ流し込む。


店主は調理している合間にお酒が入っている彼のことを聞こうとした。


フライパンを振りながら

「どこから来たんだい?」と聞くと彼は

「俺の話より面白い話がある」と予想外の返事が返ってきて思わず動きが止まる。


再び火を付け、新鮮な肉を熱されたそれに乗せると、腕を動かしながら再び質問をする。

「それはどんな話だい?」


彼の表情はフードのせいで口元しか見えないがそれを聞くなり少し口角が上がっていた。

「悪魔の子についての話しだ」


店主は出来上がった料理を彼の前に提供するとカウンターに肘をつき、話す体勢を作る。

「最近、見つかり処刑されたってやつか?」


彼は出された肉を頬張りながら

「そうだ。気になるか?」


気になるかと言われれば気になるし、聞けないとなると聞かなくてもいいような話しだった。店主は誰かが処刑されたりした話を好き好んで聞くような人では無い。

「気にはならないが...だが最近はどこもかしこもその話で持ちきりだなぁ」

「そうだろう。俺はそいつについて知っている」

「...話してくれるか?そいつの話を」


彼は軽く頷くと、ナイフとフォークを置き、両手を机に乗せてジェスチャーを交えながら話し出すのだ。


残酷で愛のない、

神の子でありながら人間に見捨てられた、

悲しい悪魔の子の話を。









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