妹を溺愛したい旦那様は婚約者の私に出ていってほしそうなので、本当に出ていってあげます
大舟
第1話
「アリアのやつ、いっそこのまま出て行ってくれれば助かるのだがな…」
「グ、グレゴリー王子…。そんなことを言ったらアリア様に聞かれてしまうかもしれませんよ…」
「はぁ…。僕とした事が、どうして婚約者の選定を見誤ってしまったのか…」
美しく輝く第一王宮の広間において、時の第一王子であるグレゴリーはそう言葉をつぶやいた。
そんな彼の愚痴を受け止めるのは彼の臣下であるユリウスであり、グレゴリーの言葉を何でも受け入れるイエスマンであった。
「ユリウスよ、どうしてお前は最初からアリアの妹であるリリナの事を僕に勧めてこなかったんだ…。会ってみて驚いたが、彼女の方が数段可愛らしく魅力的だったぞ…。こうなることが分かっていたなら、アリアの事を婚約者になど選ばなかったというのに…」
「申し訳ございません、グレゴリー様…。私もまさかこんな結果になろうとは思ってもおらず…」
元々、グレゴリーに対してアリアの事を勧めたのはユリウスであった。
だからこそグレゴリーはその点をユリウスに対して追求しているのだが、そもそもの婚約のきっかけを作ったのはユリウスではなくグレゴリーの方だった。
「(グ、グレゴリー様が急ぎ婚約者の候補者リストを作れというからおつくりしたというのに…。その結果アリア様を最終的に選ばれたのはグレゴリー様ではありませんか…。女性に対する接し方にあまり免疫がないためか、アリア様の事を執拗にストーキングまでして…。その結果半ば強引な形で婚約を結ぶこととなったというのに、今度はその責任は私にあるなどと…。これも臣下の仕事なのでしょうか…)」
ユリウスはグレゴリーに聞こえないよう心の中で、そう言葉をつぶやいた。
それもそのはず、ユリウスにしてみればすべてグレゴリーに与えられた指示に従ったまでの事であり、それに関して何か文句を言われるのは全くの筋違いであるのだから。
しかしそんな事関係ないと言わんばかりの雰囲気で、グレゴリーは一方的な言葉を言い連ねていく。
「なぁユリウス、お前はどう思う?僕はもうアリアとの関係を終わりにしてしまいたいのだが、かといってこちらから婚約破棄を行ってしまったら僕の評判が悪くなってしまう。なぜならお前がすすめてきた婚約関係を僕の側から申し込んだからだ。自分の方から申し出ておいて自分の方から断ったりしたら、それこそ周りから何と噂をされるかわからない」
「そ、それはそうかもしれませんが…」
「だから僕にしてみれば、アリアが自分から出ていってくれるように誘導するのが一番だと思うんだ。何か異論はないか?」
「と、特にありませんが…」
内心ではいろいろな事を思っているユリウス。
しかしそれをそのまま口にすることができるほど、彼は勇気というものを持ってはいなかった。
「だからユリウス、お前に命令をさせてもらう。アリアがここから一人で出ていくように振る舞うのだ。使用人たちを使ってもいい。アリアがここにいたくなくなるほどの陰口をたたかせ、嫌がらせを行うのだ」
「(し、しかしグレゴリー様!それこそ周りにバレてしまったら我々王宮はどう非難をされるか分かりませんよ!?下手をすればグレゴリー様の進退にかかわる問題になるかもしれません!!)」
そう心の中で反論を行うユリウスであったあものの、当然それを口にすることなどできるはずもなく…。
「で、ではそのようにいたしましょう…。アリア様を自分の足でここから追い出すことが最終目的というわけですね…?」
「あぁ、その通りだ。さっきも言った通り、こちらの方から追い出してしまったら周りから何と後ろ指をさされるか分かったものではない。これは絶対に内密に、かつ効果的に行わなければならない計画だ。アリアの精神を攻撃し続けろ」
「は、はい…」
その行動に正義があり、確かな理由があるのならまだよかったかもしれない。
しかしその先にあるのはただただ浮気をしたいという下心のみであり、それは決して明るい話などではなく、正義を伴うような話でもなかった。
「僕はこれでつかみたいのだ…。リリナとの確かな愛情に満たされた関係を…。そのためにアリアが邪魔だというのなら、僕は心を鬼にしてアリアの事を切り捨てる。そうでもしなければリリナの心を掴むことはできないのだからな」
「(…それもおそらく、リリナ様の策略の中だと思いますよ…。彼女は極めて裏の性格が悪いともっぱらの噂ですから、きっとそれを思い知らされるだけになるのではないかと思っているのですが…。しかしここまで夢中になられてしまったなら、それを経験するまで理解できないのでしょうね…。アリア様がどれほど王宮のために動いていて、どれほど美しい心を持っているのかということに…)」
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妹を溺愛したい旦那様は婚約者の私に出ていってほしそうなので、本当に出ていってあげます 大舟 @Daisen0926
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