第二章 神々の囁き


 僕が描いたこの小説作品をぜひ読んでほしい。これは僕なりの自信作だ。ある部分は私小説かもしれないが……


 野々村浩介は売れない作家でありながら、神々が宿るという聖地への夢を持ち続けていた。彼の目には、蒼穹の彼方に無数の世界が広がり、そのひとつひとつが独自の物語を紡ぎ出しているように見えた。


 東京の喧騒から逃れるため、浩介は部屋の片隅に置かれた木箱で夢を綴っていた。彼の書いた小説は、生命力に満ちた平和な物語ばかりであり、彼自身がその中を冒険しているかのようだった。


 ある日、夕暮れの空の下で久しぶりにフリーマーケットに立ち寄った。木枯らしが吹きすさぶ冬の寒空の中、肩をすくめながら歩くと、数多くの店が独特の雰囲気を醸し出していた。


 特に目を引いたのは、うさぎ模様のフリースを着た若い女性が店で微笑んでいる姿だった。彼女の南国風バンダナと魔除けのミサンガが印象的で、その笑顔は寒さを忘れさせる温かさを感じさせた。


「どうぞ手に取ってみてください。絶版なので、これが最後のチャンスですよ!」


 彼女の優しい声に誘われて、浩介は立ち止まった。年季の入ったワイン箱、なぜかその中にさりげなく置かれた一冊の古本に関心を寄せた。


『魔界への招待状』と題された本は、見知らぬ黄金色の文字と雪の結晶を思わせる六角形の模様が描かれていた。


 古びた本を手に取ると、一枚の栞が滑り出てきた。「素晴らしい作品なのでゆっくりと読んでください」と書かれており、浩介はその言葉に心が引き寄せられた。


 彼は本を手に入れ、アパートに戻るとすぐに読み始めた。食事も忘れ、部屋の中は本を読むための明かりだけが揺らめき、周囲は真っ暗になっていた。本に没頭するうちに、神秘的な囁きが聞こえてきた。


「君は選ばれし民として、この凍える聖地に招かれたのだ」


 その言葉に導かれるように浩介は深い眠りに落ち、目を覚ますと七色に輝く懐中時計と羅針盤が足元に置かれていた。蒼穹の樹海が広がる未知の風景が彼の視界に広がり、夢の中の世界が現実となったように感じられた。


 風に揺れる雪の結晶が輝き、見たことのない樹木や生物が周囲に溢れていた。この世界には争いごとがなく、ただ冬ごもりのための食物連鎖があるだけだった。


 長年夢見ていた心癒される世界に来たことを実感し、浩介の胸は高鳴った。彼はその世界で様々な困難や試練を乗り越え、自分の真の力と向き合い、心が自由と喜びで満たされていった。


 最後に見た景色は、ホワイトスノーの世界の中で輝く、希望に満ちた未来の光だった。浩介の冒険はまだ始まったばかりだが、その一歩一歩が彼をより強く、より輝かしい存在へと導いていった。


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