短編 浦島太郎役は男とは限らない

@sinon_t

第1話 作戦会議(犯罪一歩手前?)



「はあ・・・また男だったな・・・」


「まあまあ、乙姫様(おとひめ)、そんなに嘆かないでください。」


ここは竜宮城。人の間では浦島太郎の昔話の地として知られているが実在する海の都であり、その当主である乙姫は今日も訪れた男に

玉手箱を持たせ見送りを終えた後、彼女の側近であり、人間の送迎を担当している

亀甲(きっこう)に愚痴をこぼしていた。

なぜこんな誘拐まがいのことをしているかというと・・・


「はあ、お父上にそろそろ跡継ぎを作れとせっつかれているが・・・妾は人の男なんぞに興はないのだ。女のほうが可愛らしいし柔らかいしでいい事ずくめではないか。それに妾たちは不老不死に等しいほどの寿命を持っておるというのに・・・」


「そうは言っても乙姫様、お父上様も早く孫の顔が見たいと嘆いておられるみたいですし・・・」


「それはお父上の勝手じゃ!妾は婚約者を作るつもりはないからな!少なくとも男はありえん。のう、亀甲。たまには女を連れてこんか?」


「そうは言っても乙姫様、か弱いおなごがいじめを止めに入るのは難しいですぞ・・・」


「はあ〜、なぜこのようなルールがあるのだ。これでは気に入った者をゆうか、い、いや、招待することもできぬではないか。」


「そうやって乙姫様みたいに誘拐まがいといいますか誘拐そのものをしようとする者が出ないようにこのようなルールが設けられたんだと思いますぞ。」


「むむむ・・・どうしたものか・・・」


「とりあえず気長に待たれては?本気でお叱りを受けそうになったら覚悟するくらいでやればいいんですよ。」


「まあ、そうだな。さっき自分でも言ったが妾たちの寿命は永遠と等しいほど長い。気長に待つか・・・と言って早何十年。タイプの人間どころか女すら訪れんではないか・・・」


「そんな日が来ればいいのですが・・・」


「なにか工夫でもできんのか?」


「工夫と言われましても・・・いじめられたところを助けた者しか連れてこれませんので」


「そうだ!お主がいじめられた後少しそのまま待っておればいいのだ!少々心は痛むが・・・」


「それで何か変わるでしょうか?」


「いじめを止めに入るのは難しいかもしれんが傷ついた亀を助けるだけならさほど難しくもないであろう?それこそ女でも簡単に釣れ、いや、助けてくれるであろう。」


「たしかにそれなら可能でしょうが・・・かなりグレーゾーンでは?」


「そんなのかまわん!何と言われようが妾が愛するものは妾で決めるのだ!」


「どうなっても知りませんからね・・・私は忠告しましたよ。」


「よし、そうと決まれば早速実行に移すのだ!」

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