異世界剣姫と勇者英雄譚

飛瀬川吉三郎

プロローグ苦労ある現世から異世界の勇者へ


「ギャハハッ!」


廃工場、シャブ中の半グレの金属バットで頭をフルスイングされて喜本正人きもとまさとは倒れる。


「グッウゥウッ!」


泣きたくなるが、それでも立ち上がる。


そして、通信空手で学んだテレフォンパンチを半グレの一人に当てる。


「ってぇなぁ!逆らうんじゃねぇぞ雑魚虫!」


喜本正人は反撃で、一撃、頭突きされてから両拳を重ね合わせて、背中に振り下ろされた。


また倒れる、しかし、立ち上がる。


幼い頃見た特撮のヒーロー、戦隊もの、仮面ライダー、正義の巨人、ハイパーマン、女児向けの女の子が闘うアニメ、セイントアマゾネス。


そういうのにも自分はなりたかった。でも、現実は甘かった。小学校時代はガキ大将からランドセルを持たされ、校内の便所掃除を全裸でやらされて、服やパンツで便器を拭かされた。


悪臭で女子達から嫌われ、母親に言ったら、笑われた。父親に言ったら「弱いから悪い」と言われた。家はヤニ臭く、そしてゴミ屋敷だった。そして、担任の女性の先生からは全裸で土下座されて「耐えてくれ」と言われた。


担任の女性の先生のあだ名は地蔵と呼ばれて、ガキ大将のせいで学級崩壊したクラスで発狂して、裸踊りをクラス全員の賛成多数でやらされた。以来、町中でも全裸徘徊の噂がある。


女性の先生は先生として問題を見逃したのだ。


そのガキ大将は他にも好きな給食を奪ったり、喜本正人がカードゲームでレアカードを当てた情報を聞くと盗むを繰り返していた。クリアしたゲームカセットは幾つも借りパクされた。


そのガキ大将は中学校、不良の先輩達と付き合うようになって、半グレまで関係を持った。


ガキ大将と不良の先輩達、半グレは喜本正人を玩具のようにもてあそんだ。そして今だ。


ガキ大将は闇バイトによる強盗致傷によって、少年院送致となった。不良の先輩達は去り、半グレという置き土産を喜本正人に用意した。


そして、半グレが五人目の前にいる。半グレの残り三人は廃工場の片隅で麻雀まーじゃんしていた。が、苦痛があったと聞きやめて、こっちに来た。


そして、殴る蹴るのリンチをされた。


ボロ雑巾になっても闘志だけは喜本正人に残っていた。でも五人はその場を去っていった。


そこにトラックが走ってきた。見ると小学校の女性の先生だった。天使のコスプレをしていて、背中には白い羽をとりつけていた。


泣きながら、狂気的に笑みをしていた。


そんなイカれた世界でイカれた女に轢き殺された。ガキ大将が少年院で何してるかは知らない。そんな事を少し考えて喜本正人は死んだ。


中学生で二年に進級したばかりの時だった。


「素晴らしい勇気だったね」


見知らぬ場所で見知らぬ女が号泣していた。


それは感動の涙だった。









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