第十一話

前の話はこちら(兵装さん)

https://kakuyomu.jp/works/16818093090944039209/episodes/16818093091493895810


 本当のことだなんて信じられない。だけど、ポケットの中にあるオプサイドがその事実をはっきりと示している。

 電車で帰っているとき、何回も手で確認したこの小さな小箱。それをゆっくりと取り出して、慎重に開けた。


「わぁっ……!!」


 オプサイドはイルミネーションの中でもきれいに輝いていたけれど、気持ちを伝えられた今の方がずっとずっと輝いて見えた。いつもバイト中に眺めているはずなのに、倉岡さんが贈ってくれたものだけもっと素敵に見えるのはなんでだろう。

 ゆっくりゆっくり、その宝石を持ち上げて部屋のライトに透かす。その光はさらに輝き、特別に見えた。


「――ピロン」


 メッセージアプリの通知音が部屋に響く。

 バイト終わりのこの時間、何だろう? 友達はみんなクリスマスデートだし、親も家にいる。


「まさか、ね」


 倉岡さんからメッセージが来ててほしいな、だなんて思っちゃうのは私のわがままだ。そんなはずも、ないし。

 電源ボタンを押して、通知を見る。そこには――


「大、貴」


 これ、倉岡さんの名前だ。え、うそ? ほんとに? 恋人同士なら、毎晩こういうこともしたりするのかな?

 心がじんわりと温まっていくのを感じる。そして、肝心のメッセージは――




『あさって、バイト終わりにデートしないか?』



 あさって。バイト終わり。デート。



 思考が追いつかない。体温が上がっていくのを感じる。多分、今私の耳は真っ赤になっていると思う。心臓も、バクバク言ってる。


 ロックを解除して、倉岡さんとのトークルームを開く。今までは形上追加しただけで、会話をしたことがなかった。だから、これが最初のメッセージ。


「――最初のメッセージがこれとか、ちょっとずるいですよ、倉岡さんっ」


 いつもの調子で、軽口をたたこうとしてみる。でも、無理だ。



「……もっと、惚れさせられちゃうじゃないですか」


 もう、十分惚れてるんですよ? 倉岡さんのこと好きなのに、大好きなのに。もっともっと、好きになっちゃう。


 自分の気持ちに気づいく前から、倉岡さんのことを知らぬ間に見つめていた。気持ちを自覚して、両思いになって、倉岡さんがもっともっとかっこよく見えてきたの。

 不思議。今日だけ、私には聖夜の幸せな魔法がかけられているのかもしれない。


 なんて返すのが正解かな? もちろんです? それともちょっと素っ気なく? いやぁ、嫌われちゃうのは絶対いやだな。


 悩みに悩んで、送信ボタンを押す。


『わかりました! 楽しみにしてますね』


 自分の気持ちに嘘なんて、つけそうになかった。

 私は、どうしようもなく倉岡さんのことが好きらしい。



「――ピロン」


 また、通知が届く。倉岡さんの一つ一つの行動に動かされてる自分がいるのがわかる。


 「大貴」のトークルームには二件の新規メッセージがあった。



『よかった。一日遅れのクリスマスデート、ってことでいいか? 俺も楽しみにしてる』


 ……一日遅れの、クリスマスデート。その響きがたまらなく愛しい。今まで、心の底で憧れていたもの。それを倉岡さんとできるってことが、嬉しくてたまらない。


「あ、あと一件は……」


 倉岡さんは二件のメッセージを送っていたはずだから、あと一件なにかきてるはず。


 すっかり暖まった手でスマホをスクロールする。そこには……



『おやすみ』


 ……と書かれた、ねこのかわいいスタンプ。倉岡さんって、ねこ、好きなのかな?

 ……かわいい。偶然私もねこ派だ。


 倉岡さんの新たな一面を知れたようで嬉しくなる。


 私も、『おやすみなさい』と書かれたうさぎちゃんのスタンプを送った。



 聖夜の魔法は解けてしまうだろうけど、倉岡さんの気持ちだけは消えませんように。


 そう祈りながら、私は笑顔で眠りについた。

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