第三話
前の話
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学校とバイト先のアクセサリーショップと家とを行き来する日々が続く。つまらない。ほんとにどうすれば私は変われるのだろうか。
雪はどんどん降り積もっていく。まるで、私の生き方みたい。
自分で自由に動けなくて、溶けるのを待ってる。でも、なかなか溶けない。僅かな希望を信じて、私は今日も笑顔を浮かべる――。
「いらっしゃいませ」
バイト終わりの駅前。街のイルミネーションは今日も輝く。
どれだけ毎日が苦しくても、輝きを放ち続ける。眩しい。羨ましい。そう思ってしまう、自分が嫌い。
まだ努力出来るのに、出来るはずなのに。理由をつけて全てから逃げる、自分が嫌いだ。努力が出来ない、自分が惨めだ。
私の背丈の何倍もあるような、大きなツリーを見上げて息を吐いたその時だった。
「――石倉?」
聞きなれた声がする。本当に思わず出た声、という感じだけれど。
後ろを振り向く。そこには――。
「倉岡さん?」
バイトの先輩、倉岡さんがいた。
私の頭――何個分だろう? 分からないけれど、倉岡さんは背が高い。すぐにわかる。
さぁ、こういう時はどういうのが正解なんだろう? いつもお世話になってます? ちょっと硬いだろうか。かといって軽すぎてもいけないし……。
もうなんにも分からなくて、ちらっと倉岡さんを見上げた。すると――。
「…………え?」
倉岡さんは、固まっていた。こんなに固まるなんて、何かあったんだろうか。
「あの、えっと……大丈夫ですか?」
腕をつんつんとつついてみた。
すると、倉岡さんはびくっと飛び上がって……少しだけ、私から逃げた?
「……っと、あ、ごめんな」
そう言って、倉岡さんは笑顔を作る。どこか、無理やりに見えた。
「いえ、ぜんっぜん大丈夫ですよ!」
私も、笑顔を返す。笑えていたかな? 笑えてたら、いいな。そんな私に、倉岡さんが口を開く。
「石倉、バイト帰り?」
「はい! そうですっ」
こんな感じで、良いのだろうか。最適解なんて知らない。あるのかもわからない。
けれど、私は私のままでいたい。倉岡さんは、くしゃっと顔を崩した。
「そうか。あんまり頑張りすぎんなよ?」
――心配、してくれてるのかな。私のことを? 倉岡さんが? そんなわけ、ないか。私の勝手な勘違いだよね。
でも、素直に嬉しいと思っちゃう私がいる。私って、案外チョロいのかもしれない。
「大丈夫ですよ! お客さんの道しるべに、なりたいですから」
道しるべ。
このコトバは、倉岡さんが教えてくれたコトバだ。
『誰かの幸せのささやかな道しるべになる。それが俺たちの仕事だ』……って。
私なんかが道しるべになれるわけないかもしれない。だけど、頑張りたい。少しでも笑顔になって欲しい。
そんな想いがあるから、私はこのバイトを続けられている。
倉岡さんは、こちらを驚いたような顔で見つめたあと――また、笑った。
「今日も寒いからな。風邪引くなよ」
「安心してください! 私、元気だけが取り柄ですもんっ」
腕で軽く力こぶを作りながらおどけてみせた。すると、倉岡さんはぼそっと――。
「――――――だけ、じゃねぇけど」
「え?」
今、何か言ったよね? 何を言ったんだろう。
「あの、今なんて――」
そう聞こうとすると、倉岡さんの耳がどんどん赤くなっていった。――さっきまであんなに冷たそうだったのに。急に熱出ちゃったのかな?
そんなことを冷静に頭の中で考える。その間も倉岡さんは真っ赤になり続けていった。
「いや、なんでもないっ。じゃあな! 帰り、気をつけろよ」
「あ、はーい……?」
疑問は残るけど、やっぱり倉岡さんはいい人だと思う。
私の……憧れ? なにか、違う気がしなくもないけれど。
この想いの正体が分かる日は、来るのかな?
来るよね、きっと。その日がいつかは分からないけれど、待ってみようと思う。
街のイルミネーションは、今日も変わらず輝く。
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リレー小説 幸せの道しるべ 詩 @umiuta
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