私、そんな魔法教えてないけど!? ~凡才師匠と天才弟子の穏やか? な魔法生活~
ひっちゃん
そんな魔法教えてなああああああああああああああああああああいっ!!!
「……フィリア?」
「はい、師匠!」
私の呼びかけに、目の前の桃髪ショートの少女――フィリアが眩いばかりの笑顔で元気よく返事をする。
彼女は私、レナに師事する駆け出しの魔法使いだ。私は今日も、彼女に自分が知る限りの魔法を教えていた……のだけれど。
「私、水の初級魔法の復習をするようにって言ったよね?」
「はい! なのでいっぱい頑張りました!」
うんうん、返事は実に良い。師匠の指示に素直に従う良い子である。事実ちょこちょこ様子を見て居た限りでは、その鍛錬はいたってまともなものだったし、非常に熱心に取り組む姿勢はまさに賞賛ものだ。
ただ一つ問題があるとすれば、それは――。
「……じゃあ、その腕の中のものは何?」
「ぽわぽわちゃんです! 水魔法の練習してたらできました! 可愛いでしょ!?」
何故かその鍛錬の過程で、見たことのない魔法生物を生成していることくらいだ。
……いやあの、え? 私、今日は普通にちょっとした水を生み出す魔法の復習を指示したよね? 何か黒魔術的なものの指示なんて出してないよね? なんで生命作り出してるの?
「えへへっ、師匠のおっしゃる通り魔力を集めて語り掛けるイメージをしてたらできたんです! やっぱり師匠はすごい!」
どこか幻想的な光を放ってプルプルしているスライムのようなそれに頬ずりしながら、フィリアは実に満足げだ。……というか何それ、何で透明なのに虹色に光ってるの? あとなんか言葉に表現するのが難しい音がするんだけどこれって鳴き声か何か? あぁ、その音から取ってぽわぽわちゃんってこと? いやネーミングセンス独特過ぎない? てか水魔法ベースなのに触っても濡れないのそれ?
「やっぱり師匠の魔法は世界一! ほらほら師匠、師匠もぜひ触ってあげてください! ひんやりして気持ちいいんですよ!」
そう言いながら、フィリアはそのぽわぽわちゃんとやらを私に差し出してくる。正直触るの結構勇気がいるんだけど、こんなに嬉しそうな弟子にせがまれては仕方ない。とりあえず、指で一突き、と……。
うわっ、何これ思った以上にぷにぷにしてる。譬えるなら発酵させたパン生地をもうちょっと軽くしたような感じだろうか。つつかれた反動でぽよんぽよんしてるの、不覚にもちょっと可愛いとか思ってしまった。
元が水魔法だからか確かにひんやりしていて、暑い季節には丁度いいかもしれない。……しれないけど、だからといって彼女(?)の得体の知れなさは変わらないからね? 一応気配的には無害そうだけどホントに大丈夫なのこのこ?
「ほら師匠、ぽわぽわちゃんも師匠に触ってもらえてうれしそうです! よかったねぽわぽわちゃん!」
……ツッコミどころは挙げればキリがないんだけど、とりあえずこれだけは言わせてほしい。
「――そんな魔法教えてなああああああああああああああああああああいっ!!!」
私の渾身の大絶叫が庭中に響き渡った。
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