煙草と気霜

要想ケルヲ

煙草と気霜

※[この作品は、フィクションです、実在する人物、団体などとは、一切関係ありません、そして様々な発言も特定の人物、団体についての言及、中傷ではありません、それではご理解を上にお愉しみ下さい]



 僕は、

 それは、彼これ、小学生の頃だろうか。

僕はある日の冬、小学生の冬に、にラーメン屋に連れて行って貰った。

 その日は雪は降っていなかったが、それはそれは凍えた日だった。

それこそ、手が霜焼ける、気霜きじもが自然と口から出る程の寒さだった。

 僕は、子供だからか、防寒着を何着も着込んで、ニット帽も被って、父さんと家を出た。

僕は無邪気に家の駐車場の周りを走り回って、父さんの車に乗り込んだ。

たしか、その時は、後部座席だったか、僕は曇った窓越しから、軽く小走りして来る、父さんを見つめていた。

そして、父さんが、運転席に乗り込んだ時、後部座席の僕の方を見て、父さんは、こう言った。

「あんまり、走ったら、ダメだぞぉ?」

「危ないからな……」

父さんは、そう、苦笑しながら、僕に、当に様に、言った。

僕は、静かに、頷いて、車を出す様に父さんに強請ったねだった

父さんは、微笑しながら、右手で、鍵を回し、エンジンを蒸した。

そうして、僕達は、凍えた住宅地を抜けて、ラーメン屋へと、向かった。

 その、父さんの、車を運転する姿は、とても、安心感を覚えていたのを、今でも覚えている。


 父さんと僕は、車を走らせ、道のりを走っていき、ラーメン屋へと着いた。

僕は、車が駐車場から駐車する時、父さんの方の、フロントガラスから、ラーメン屋の赤く光る、看板をワクワクしながら見つめていた。

そうして、僕が、ラーメン屋の看板を見つめている内に、車は無事に駐車場に駐車し、その場で動きを止めた。

僕は、空腹感を感じながらも、興奮気味に、父さんと、車を出た。

 そう、この時、僕はラーメンを初めて食べたのだ。


 僕達は、寒がりながら、曇った窓から、見える店内を、覗き込みながら、ラーメン屋へと、入った。

ラーメン屋へ入ってみると、想像以上に、客は少なく、僕達は、比較的ゆっくり、ラーメンを食べれる事に成った。

入口に、店員さんが駆け寄って来て、僕達を見て、言った。

「2名様ですね〜」

父さんは、微笑しながら、言い返した。

「はい」

僕は、終始、困惑した表情を浮かべながらも、父さんと共に、テーブル席に着いた。

 僕は、霜焼けした、赤い手に息をかけながら、手を温めていた。

父さんは、その様子を、頬杖を付きながら、見つめていた。

すると、父さんが、突然僕に、こう、言った。

「〇〇〇、お父さん、ちょっと、

僕は、解ったように、頷き、父さんが、差し出した、手袋を嵌め、手を温める事にした。


 暫く、時が流れ、僕は店員さんが、まだ、ラーメンを持ってこない店内の様子を眺めて、席を立った。

一人、ラーメンを待つのはこの時の僕には、退屈過ぎたみたいだ。

 僕は、明るい店内の灯りに照らされながら、父さんを探していた。

父さんは、どの席にも、見当たらず、僕は父さんの言葉を思い出して、窓から外を覗き込んだ。

外は、相変わらずの曇天で、その薄暗い道路には、車がライトを光らせながら、走っていた。

僕は、困惑した様子で店内を探し続け、とうとう、父さんの姿を発見した。

父さんは、ラーメン屋の入口付近の喫煙所で、独り椅子に腰を下ろして、を飲んでいた。

僕はガラス越しから、手を付き父さんを凝視した。

父さんは僕や母さんに、一度も見せてこなかった、憂鬱そうな顔色で煙草を飲んでいた。

 僕はそれを見て、父親が如何に大変かを感じたと同時に、それが格好良く見えた。


 父さんは暫くして、煙草を吸い終え、僕の方に目をやった。

父さんは、僕に気付いたみたいだ。

父さんは、僕に対して微笑み、椅子から立ち上がり、僕に駆け寄って来た。

父さんは、いつも笑顔だった。

僕は父さんに、席に連れられる時、父さんにこう尋ねた。

「パパ、さっき、口で噛んでた、紙なに?」

父さんは、可笑しそうに笑って、僕を見て、言い返した。

煙草たばこって言うんだ、〇〇〇にはまだ、早い物だよ」

僕はその父さんの言葉を聞いて、少し顰めた顔をしたと思う。

 あんなに格好良く、煙草を吸う、父の姿が何処か羨ましかったから。


 僕が煙草に憧れだしたのは、そんな理由だ。

勿論、などはしていないが。


 今日、僕はそんな父さんの、墓参りに来た。

僕は、母さんに買ってもらった、父さんがよく、十八番おはことしていた18の煙草の箱を握りしめていた。

僕は父さんの墓場の前に、立ち、そっと、墓石の前に、煙草の箱を置いた。

墓石は凍り付いたそこらの氷の様に、冷たく、僕は、墓石に手をやりながら、箱の中から、一本の煙草を取り出した。

僕は、その煙草を中指と人差し指の間に挟み、気取った様子で、煙草を吸う真似をした。

 僕は凍えた墓場で息を吸った、鼻からは、突き刺してくる様な、凍えた空気が入ってきた。

僕はそれを味わいながら、息を吐いた。

息は、白く染まり、霧に成った。

 僕は、の様に、を吐いた。

そして、静かに呟いた。

「ちょっとは様に成ったんじゃ無いか?」

「父さん」

 僕はそう、言い、冬の空を眺めた。

 気霜を吐きながら。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

煙草と気霜 要想ケルヲ @YOUSOU_KERUO

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画