楽屋番

茶村 鈴香

楽屋番

舞姫たちは

息を切らせて

幕間に戻ってきて


この娘は衣装替え

この娘はメイク直し

この娘はアイシングに湿布


「転んじゃった」

はじめてのトゥシューズ


「泣かないでいいの」

よく冷やしてテーピング


「次の次の出番だし間に合うよ」

舞台化粧の紅い唇に

ミルクキャンディ放り込む


落ち着いて


一番上手だったはずの

自分だから悔しいよね


一番乗りでスタジオ

鏡前でポーズを直してた


舞台って残酷

努力より運だったり

正確も繊細も笑顔に勝てなかったり


でも


舞姫たち

踊りたいんでしょ

ピルエットもアラベスクも


出来るよ


楽屋の小さいモニター

ちゃんと見てるから

安心していってらっしゃい


何かあっても

ここで待ってるから


















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

楽屋番 茶村 鈴香 @perumi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ