天使の矢

かいまさや

第1話

 あるところに、恋の病を患った天使がいた。想い人は下界の人間だった。彼は正直で優しい男であった。彼女は心をいとめる天使の矢を、彼と自らの身体に刺した。しかし、天使の矢は天使にその力を発揮することなく、ただ生命をうばう一矢となった。天界の掟をやぶった彼女は血を滴らせながら、天界から転げ落ちた。下界の彼は、どこらから現れた矢じりのけがをおった少女を抱き上げる。天使はすでに身うごきもとれなかったが、天使の血を浴びたことで、彼には幸福な日々が約束された。天使はそのことに安堵すると同時に、幸福な日々を送る彼のとなりに、私はいれないのだと思うと、どうしようもなく悲しくなった。

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天使の矢 かいまさや @Name9Ji

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