猫の木

@kai-mizuki

猫の木

 昔々、或る大変徳の高いお坊様がおりました。国中の津々浦々を行脚され、病の者あれば病を治し、川が干上がれば雨を呼び、数々の奇跡を起こして、貧しき村々や人々を救ったということです。

 そんな立派なお坊様も歳月には逆らえずお歳を召され、この地にて終の棲家に小さな庵を結ばれました。

 或る日のことでございます。縁の下に生まれたばかりの仔猫を見つけました。何ということでしょう。その小さな命が今まさに尽きようとしているではありませんか。お坊様はこの世の無情に涙を流し、最後の奇跡を起こして仔猫を生き返らせました。

 その後、力を使い果たしたお坊様の身体はすっかり弱ってしまいましたが、仔猫と共にこの庵で静かに暮らしました。

 いよいよお坊様が床から起き上がれなくなると、再び奇跡が起こったのです。なんと、仔猫が少年の姿となって、お坊様のお世話をするようになりました。言葉こそ話せませんでしたが、なんら人間の子と変わらぬ姿で、薪を割り、竈門で飯を炊き、甲斐甲斐しくお坊様のお世話をする様子に村人たちは大変心を打たれたとのことです。

 献身的な看病の甲斐あってか、お坊様は二つの季節を過ごし、早春の花の中静かに息を引き取りました。白い月明かりが美しい満月の晩のことでした。

 翌朝村人がいつものように庵を訪ねると、お坊様の亡骸に寄り添うように仔猫が一匹眠るように横たわっておりました。

 村人は、お坊様と一緒に仔猫を埋葬しました。やがて、埋葬したこの場所から一本の木の芽が生えてきて、大きくなり、二人が亡くなった季節になると月明かりの下で輝くような白い花を咲かせるのです。

 人々は、お坊様と仔猫を偲んで此処に御堂を建てました。そして、親しみを込めてこの木を『猫の木』と呼んでいます。

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