これは、とあるパソコンに残されたデータ

バルバルさん

ほんとうに こうかいしませんね?

 残念、あなたは呪われてしまった!

 何故って? 「読んだら呪われる小説募集企画」に応募した小説を読んだからに決まってるじゃん。何言ってるの?

 まあともかく、あなたは呪われてしまった!

 この呪いを解く方法はただ一つ、この作品に☆3評価とハートを……あっ。ごめんバックスペースしないで嘘です嘘です。

 あなたにかかった呪いを解く方法はただひとつ。この後に書かれる小説の締めくくりの「。」これを見ればOK!

 え、どんな呪いかって? そんなの書けるわけないでしょ!

 ただまあ、棚の角に足の小指の爪をぶつける程度じゃ済みませんよ。

 ではでは、あなたにかかった呪いを解くための作品をどうぞ!


◇◇◇



 ~ある魔王と妻の楽しいお茶の時間~

 潮騒が聞こえる窓辺。そこには、純白で清潔感のある机と椅子が二つ。机の上には薄い焼き菓子が三枚入った籠にティーカップが二つとポット。それに小さなミルクピッチャーにシュガーポットも置かれている。

 その純白の椅子に腰かけているのは、年の程20代前半ほどの青年。彼はポットで作った紅茶。それをカップに入れ、香りを確かめる。

 そして薄く笑みを作り、カップを置いた。


「円の国。かの国の貴族達は腐敗した臭いしかしなかったが、彼らの国の茶葉で作る紅茶の香り。これを楽しめるのだったら、行く価値はあったな」

 

 そう呟くように言いながら、青年は立ち上がり。窓辺から海の方向を見やる。


「あぁ、そういえば君は紅茶はストレートより、ミルクティー派だったね。安心しなさい、ちゃんとミルクも用意してある」

 

 そして振り向いたその表情は優しく、慈しむようなもの。


「あぁ、そんな恰好では茶は飲めないな。失敬、失敬」


 その視線の先には、手枷と足枷、猿ぐつわをされ、床に転がされた一人のシンプルなドレス姿の女性がいた。

 その手枷と足枷は、それぞれに傷がつかないよう、ふわふわの毛皮で覆われた、珍しいタイプの物。

 その女は、ルビー色の瞳を深紅のたっぷりの怒りの業火に燃やし、青年の青色の瞳を睨む。


「すまないな。だが、そうでもしないと私の前に来てくれないであろう?」


 そう言って近づき、ポケットから鍵を取り出す青年。もがく女性の枷の鍵穴にそれをいれながら。


「だが、そろそろ少し理解するべきだ。君の行動一つで、君の国……あぁ、『元』国のあった地域の人々に課せられる税の高さが決まるのだ」


 それを聞くと、目を見開いた後、憎々し気に男を睨み、悔し涙を流しながらもがくのを止めた。


「結構」


 そして枷が外され、青年は椅子に座る。


「さ、座りたまえ。我が妻、レイ。お茶の時間だよ」


 その言葉に、悔しさに、怒りに身を震わせながら。レイは椅子に座った。

 それを見て満足げに頷いた青年は、紅茶を口に運ぶ。芳醇な香りが鼻腔をスッと通り、その快楽にほぅと息を吐く。

 そして、目の前のミルクティーの入った紅茶を睨んでいるレイに。


「どうしたんだい?毒などはいっていないよ」


 はははと軽く笑う青年。その青年を一瞥すると、ため息を一つ吐き、震える手でカップの持つ。

 かた、かたと震える手で、そのミルクティーを啜る。

 できるだけ、青年を視界にいれないよう、目を瞑って。


「さて、良い茶には良い菓子が必要だな」


 そして指を鳴らせば、部屋に入ってきたメイドたち。その手には、美しい朱の色合いのベリータルト。

 それが置かれ、二人の前にフォークとナイフが置かれる。

 そのままメイドたちタルトを切り分け、二人の前に置いた後。部屋を出ていく。

 部屋に残った二人。青年はナイフでタルトを切り分け、口に運ぶ。


「うん、これはおいしいじゃないか。レイも食べたまえ」


 その言葉を聞き、歯ぎしりをした後、ゆっくりフォークとナイフを持つレイ。


「きっと君も気にいるはずさ。なにせ、アーノルド国……ああいや、地方産のベリーをふんだんに使ってるのだからね」


 その言葉を聞き、我慢できなくなったのだろう。机を横に倒し。レイは、震える両の手でナイフを握った。


「もう、喋るな」

「うん? 」

「喋るなと言っている、この悪魔め」


 涙を流し、怒りに、悔しさに、屈辱に震えた唇で、声で言葉を発する。


「何が目的だ。私の国を滅ぼし、王家の者たちを皆処刑し……私に、聖騎士の長であった私に、こんな生きる屈辱を与え、何が目的なんだ」

「あぁ、そういえば、なぜ君を妃にしたか。言っていなかったね」


 タルトが台無しになったね。なんて呟きながら、世間話でもするように、少し、恥ずかし気に。


「一目ぼれだ」


 そう、放たれた言葉。それを理解しないのか、できないのか。レイは目を丸くし。


「は? 」

「一目ぼれだ。アーノルド国を訪れた時、君に一目ぼれしてね、欲しくなったんだ」

「それ、だけ? 」

「逆に聞くけど、それ以上に理由が必要かい? 」

「……けるなぁ」

「うん? 」

「ふざ、けるなぁ! 」


 怒りが爆発し、ナイフで青年を刺そうと飛び掛かる。だが青年は、笑みを崩さずレイの腕をつかみ、その勢いを利用し投げ飛ばす。

 がっしゃん! と、部屋に飾られた絵画にぶつかるレイ。


「ははは。夫婦喧嘩か。いいね、あこがれてたんだ」

「悪魔、悪魔悪魔悪魔! そんな理由で、国も、主も、仲間も……」

「君が私を殺した場合、何が起こると思う?」


 そう唐突な質問。それにレイの動きが一瞬止まる。


「私の国は、君の国のあった地方から川上にある。人は、川に水を依存するよね。少なくとも、君の国はそうだった」

「何を」

「私か、君が夫婦げんかで死んだ場合、川に毒を流すよう指示を出している。君が私を殺したら、川下の国は困るだろうね」

「ば、かな……」

「ほら、どうしたんだい?ナイフが震えているが」


 そう言いながら、青年はレイに、慈しむような視線を向けながら近づく。


「ナイフという物は、こうやって」


 そして、ナイフを握る手、それを上から握り。自分の心臓へ向け。


「震えさせず、心臓へ向け、一突きする物だ」

「あ、あっぐ……」


 レイは、脱力するように座り込み、血が滲むほどに唇をかみしめる。涙を流す。

 だが、声をあげなかった。それを見て、男はうなづき。


「あぁ、愛しい我が妻、レイ。なんて強い女なんだ。だからこそ、君は私の妻にふさわしい」


 そして、青年の愉快そうな笑い声が。部屋に響き渡った


◇◇◇


 以上です。楽しんでいただけましたか?

 え、物語の最後に「。」が付いてない?これは失敬。

 まあ、気が向いたらつけますよ。

 だって、そうしたほうがこの話が繰り返し読まれるでしょ?

 あなたにかかった呪い、解ける日が来るといいですね!

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