お師匠様と弟子

鋼音 鉄@高校生

自分にとってのお師匠様

俺の知っているお師匠様は優しかった。

親に捨てられた俺を拾ってくれたのがお師匠様だったから。

ご飯も用意してくれて。沢山食べても良いと言ってもくれた。

それはこの世界に生まれてきて初めての優しさだったんだ。

心温まって、自分に対して否定的だったのが肯定できるように変化した。


俺の知っているお師匠様は凄かった。

一人で生きていけるように技術を叩き込まれた。

生活で困らないように洗濯や家事、掃除を。賊に絡まれた時ようにある程度の武術を叩き込まれた。

とても苛烈な鍛錬であったが、その節々には愛情が込められている。

それを実感できたから、激しい鍛錬もついていけた。


俺の知っているお師匠様は強かった。

強さ云々だけの話ではない。力を持つ者としての精神が強かった。

自分の為に振るう力だけではなく、他人の為に優しく振るう事も教えてもらった。


お師匠様は優しくて、凄くて、強かった。俺の知っているお師匠様は、そんな人だった。


けど、本当のお師匠様は違った。

俺を拾ったのも、俺を育てたのも。勇者としての"試験"を乗り越えさせ、勇者として降臨させようとした。

その為に人類全体に損害を与えても問題なしと言えるような鬼畜だった。


「俺は、信じる。お師匠様が教えてくれた言葉を、信念を信じる。その邪魔をするのがお師匠様でも、俺は変わらない。俺はお師匠様に育てられた一番弟子なのだから」

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