それでも、試験に対して後ろ向きではない姿を見せてくれる主人公が愛おしく感じられる物語です。コミカルなところもありますが、非常に奥深く読みごたえのある作品でした。
出所の時――とある人が迎えにやってきます。その人は主人公の人生を二十年に亘り狂わせたと言っても過言ではない。刑務所で過ごしてきた時を重く受け止めたくなる世の中の仕組みの変化と時代の進化。コメディ調で生々しく描く時代錯誤を巧く表現している点も当事者意識に基づいているように感じ取れ素晴らしいと感じます。主人公の最後の言葉が、さりげないようで何とも深い。タイトルに支えられた試験の意味を、主人公の心の器量の深さとして、また生きる時間の重さとして感じ取ってみてください。